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2016 年度 実施状況報告書

歯周病と認知症の共通リスク因子としての口腔由来エンドトキシンの役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K15777
研究機関鶴見大学

研究代表者

花田 信弘  鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)

研究分担者 野村 義明  鶴見大学, 歯学部, 准教授 (90350587)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードダウン症 / 慢性炎症 / 歯周病 / う蝕 / 歯周病細菌 / う蝕細菌 / 認知症 / エンドトキシン
研究実績の概要

ダウン症候群(DS)者は歯周病を若年期から発症し、進行が早いと言われている。これは、DS者の免疫異常、口腔衛生の不良、歯周組織の異常、唾液、細菌、染色体異常に起因した活性酸素の異常などが原因として考えられている。DSは21番染色体のトリソミーであり、21番染色体上にアルツハイマー病(AD)に関与していると考えられているアミロイドβ(Aβ)を産生するアミロイド前駆体タンパクがコードされているため、アミロイドβが多く産生されアルツハイマー病(AD)を発症するリスクが高いと考えられている。Aβは脳に沈着するが、沈着する要因の一つとして、炎症が関係しているという報告がある。我々はDS者の口腔の炎症について口腔衛生の評価、細菌学的検査、免疫学的検査を行い総合的に検討した。
その結果、DS群の80%が慢性疾患を有しており、対照群(15.8%)と比較して有意に多くみられた(p<0.001)。歯科定期管理を受けているDS者(76.7%)は対照群(23.7%)よりも有意に多かった(p<0.001)。ADLのスコアはDS群で有意に低かった(p<0.001)。DS群のアミロイドβ(Aβ42)濃度の平均(51.4 pg/ ml ± 9.2)は対照群(26.5 pg/ ml ± 4.7)と比較して有意に高かった(p<0.001)。PCR, OHI, 3㎜<PD, GI, GBIはDS群で有意に高かった。DMFはDS群で有意に低かった(p<0.001)。DS者は歯周病を若年期から発症するにもかかわらず、歯周病関連の5菌種すべてにおいてDS群と対照群の両群の間に有意差はなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

調査対象は東京小児療育病院に通院しているダウン症候群(DS;21番染色体トリソミー)の患者と、同院スタッフで、重篤な疾患や1ヶ月以内の抗生剤使用歴のない、歩行可能である非喫煙者とした。DS者の保護者と、対照群の被検者に研究計画の説明を行ったのち、DS者30名(平均年齢28.0歳)に対して書面で同意を得ることができた。また、同時に年齢を調整した同院スタッフ38名(平均年齢31.8歳)の同意を得ることができた。倫理審査は鶴見大学と東京小児療育病院にて行われ、承認を得ることができた。
アミロイドβ(Aβ42)血中濃度測定は株式会社LSIメディエンスに依頼し、ELISA法で行うことができた。

今後の研究の推進方策

アミロイドβの遺伝子は細胞内の21番染色体に存在するため、21番染色体トリソミーであるダウン症候群(DS)の患者さんの場合、アミロイドβの発現量も1.5倍多いことが予想された。平成29年度の研究で、DS者30名のアミロイドβ(Aβ42)濃度の平均(51.4 pg/ ml ± 9.2)は対照群38名の平均(26.5 pg/ ml ± 4.7)と比較して有意に高いことを証明した(p<0.001)。アミロイドβの脳内沈着には、慢性炎症や歯周病菌が持つエンドトキシン(LPS)が関与していることが動物実験で示されている。
DS者は歯周病を若年期から発症し、進行が早いと言われているので、歯周病原因菌が多いことが考えられたが、平成28年度の研究では、唾液サンプルからの歯周病原因菌の検出率は、5菌種すべてについて両群間に有意差はなかった。唾液と血液サンプルは冷凍保存しているので、今後は、歯周病菌だけでなくう蝕細菌や真菌を含めて幅広い解析を実施していきたい。

次年度使用額が生じた理由

慢性炎症を示すサイトカインが高値を示すダウン症候群(DS)者は健常人よりも歯周病菌が多いとの仮説を立てていたが、研究ではこの仮説の蓋然性を証明できなかった。そこで、歯周病菌を中心に詳細に分析する研究計画と歯周病菌の分析にかかる使用額を変更したため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度は、真菌を中心に解析をすすめるとともに、申請者らが開発している歯面薬剤輸送システム(Dental Drug Delivery System (3DS))の技術を用いて、歯面からバイオフィルム細菌を一時的に除菌することによって、口腔の慢性炎症が消退するかどうかの介入計画を加えて調査を継続する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Oral infection, periodontal disease and cytokine production in adults with Down syndrome2017

    • 著者名/発表者名
      Kosaka M, Senpuku, Hagiwara A, Nomura Y, Hanada N
    • 雑誌名

      Medical Research Archives

      巻: 5 ページ: 印刷中

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.18103/mra.v5i3

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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