研究課題/領域番号 |
15K15778
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
前田 伸子 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10148067)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔内環境 / アムホテリシンB / 常在真菌 / 歯垢付着量 / 口腔カンジダ症 / 口腔清掃 / 胃婁 / 口腔ケア |
研究実績の概要 |
現在まで、健常人を対象とし、口腔内環境を改善することを目的として抗真菌薬であるアムホテリシンB(AMPH-B)を含有する含嗽薬を用い、口腔内の真菌感染量を減少させ、その有用性を検証してきた。AMPH-Bを添加した含嗽薬を長期間継続することにより口腔内真菌量を検出限界以下あるいは極めて低レベルに維持した結果、歯垢付着量の減少に伴い、慢性歯肉炎、起床時の口腔不快感や口臭などの口腔の不具合が改善することが示された。この試験の副次的効果として、消化器の不都合を訴えていた一部の被験者で便通の改善など消化器症状の改善が認められた。そこで、今年度は、介護老人保健施設と共同で、要介護高齢者を対象に本含嗽薬を用いることで、口腔内環境や消化管症状の改善が確認できるかを検証した。その結果、8ヶ月間の含嗽薬の使用により、口腔内真菌量は減少傾向を示し、それに伴い、歯垢量が減少し、慢性歯肉炎の改善効果も認められ、含嗽前と比較して有意な差が認められた。また、施設職員へのアンケート結果からも、口腔清掃に費やされる労力が軽減し、業務の負担軽減が示唆されただけでなく、含嗽薬の継続的な使用により、口腔内カンジダ症の予防効果や、便通の改善など消化器症状への効果も示唆された。また、対象者の中で、胃婁入所者2名に関してはさらに精査し、抗真菌薬による口腔ケアによる効果が胃婁の入所者でも十分な効果が確認あり、口腔内環境のみならず、ケア環境の改善が認められたことから、抗真菌剤を使用することの有用性と重要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
介護老人保健施設入居者で本研究に参加した被験者において、抗真菌剤であるアムホテリシンB含嗽により、口腔内真菌量が減少し、さらに歯垢量が減少し、慢性歯肉炎の改善効果も認められた。また、施設職員へのアンケート結果からも、口腔清掃に費やされる労力が軽減し、業務の負担軽減が示唆され、含嗽薬の継続的な使用により、口腔内カンジダ症の予防効果や、便通の改善など消化器症状への効果も示唆された。また、胃婁入所者に関して、特にアムホテリシンB含嗽により、口腔ケアによる効果が顕著に認められ、口腔内環境のみならず、ケア環境の改善が認められた。以上から、アムホテリシンBを含嗽に継続的に使用することの有用性と重要性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は、抗真菌剤であるアムホテリシンBによる含嗽を介護老人保健施設の日常的な口腔ケアとして用い、入所者だけでなく、介護者の日常業務の軽減につながるシステムを構築したい。また、現在使用している抗真菌剤の剤型を改良し、より使用しやすく、有効性の高いものを開発したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関しては、複数の学会に参加予定であったが、研究者の本務の都合で1回の学会にしか参加できなかったことと、試料採取のための出張は予定より少ない回数で十分な試料採取できたため、予定額よりも少ない出費で終わった。また、人件費・謝金に関しては当初は実験補助の人員を予定していたが、研究代表者1名で十分な検討が行えたことと、先方の都合で謝金を辞退されたため、予定額よりも少ない出費で終わった。その他項目に関して、新しい剤型の抗真菌薬の開発のための準備が遅れたため、今年度は出費しなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費は今年度、学会参加をより積極的に行い、昨年度に試料採取を行った施設に出張し、新しい口腔ケア実施法を構築することで予定額を使用する。また、人件費・謝金およびその他の項目は新しい剤型作製のために使用する予定である。
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