急性期病院における看護観察から可視化・共有化される患者状態は、医療者にとって非常に有用で,医療の質安全上重要な情報といえる.しかしながら,必要な観察項目が網羅されているか,また必要とする観察が実施されているかについてあきらかにできているとは言い難い.もし必要とする観察が実施されていなければ,情報が欠落したまま医療者は当該患者状況を想定することになり,判断ミスを発生させるリスクがある.録がないものを後追いで可視化することは困難である.つまり、医療における「状況の揮発性」という問題が実在することになる.本研究では、看護観察の欠落状態から看護観察の質評価をする方法論を開発する.また看護観察の改善に向けたPDCAサイクルが回る改善モデルを開発する. 某県14病院の協力を得て,直近の胃がん手術患者で合併症・問題事象の発生した症例を選択し,看護ナビコンテンツで導出された術後急性期の「標準観察項目」を調査項目とし,術後急性期の期間の看護記録内に記載されていた看護観察項目をチェックする調査を実施した.その結果,バイタルサイン・インアウトに関する記録率は高かったが,症状に関する記録率は,10%~64%(平均29.5%)という低い記載率であった. 約1000床のA急性期病院は看護ナビコンテンツを臨床で活用することを決定した.A病院は看護ナビコンテンツを標準看護計画として日常的に運用できる情報システムを構築した.某病棟において調査した結果,毎日の情報収集時間が30分以上必要とする看護師率が,45.8% から 4%に減少していることがあきらかになった. 看護観察の質評価をするための方法論が完成した.またこの評価結果により,病院の看護が観察計画の質を問題とし,臨床看護知識を活用した結果,一定の改善効果が確認されたことから,PDCAサイクルを回し始める評価方法となっていることが示唆された.
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