研究実績の概要 |
【研究目的】本研究では、急性期認知機能障害高齢者モデルをもとに急性期におけるベストプラクティスをめざした戦略的ベンチマーキングの開発と地域におけるケアネットワークシステムの構築を目的とする。本年度は2年間の各指標の差を4病院に報告した。初回のベンチマーキング指標と身体拘束の関係を明らかにした。ネットワーク構築としては認知症模擬体験研修を実施し、参加者の認知症ケアネットワーク構築を行った。【研究方法】2016年4月~2018年3月に政令指定都市における急性期病院4病院の病棟看護師を対象に認知症看護ベンチマーキングとして自記式調査票を配布し回収箱にて回収した。調査項目は急性期病院の認知障害高齢者のための看護実践自己評価尺度(SSNP-PCC),看護実践自己評価尺度(CNCSS),身体拘束に関する項目などである。身体抑制に関してはミトン型手袋,腰ベルト,向精神薬使用など6項目に対して6段階の得点で聞いた。解析にはSPSS Statistics Ver.23 を用い,各項目の平均値および身体拘束の6種類を目的とした変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行って有意な関連要因を明らかにした。【結果・考察】対象者は950名,臨床経験11.46(±10.14)年であった。ミトン型手袋の装着が最も高く,介護服の使用が最も低かった。ミトン型手袋の装着を目的変数とした重回帰分析では,SSNP-PCCの「起こりうる問題を予測した社会心理的アプローチを含めたケア」,「本人の意思や価値を尊重したケア護実践自己評価尺度」,看護実践能力自己評価尺度(CNCSS)の「倫理的実践」が有意な抑制要因であった。本人の意思や価値を尊重や倫理的実践が高いことが,身体拘束の実施を減少させていた。看護師の安全・リスク管理などの責務の高さが過剰な身体拘束の促進の可能性が明らかとなり,看護師の倫理と安全管理の意識のバランスが重要であることが示唆された。
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