わが国の超高齢化に伴い、急性期病院では認知症の行動・心理症状(BPSD)やせん妄のある高齢者が増加して看護師はさまざまな困難な状況に遭遇している。急性期病院の認知症高齢者の研修などが実施されるようになったが、ベストプラクティスのモデルやアウトカム評価がなされていない。本研究の目的は、急性期認知機能障害高齢者モデルをもとに急性期におけるベストプラクティスをめざした戦略的ベンチマーキングの開発と地域におけるケアネットワークシステムの構築とした。 1.急性期看護の戦略的ベンチマーキングの開発:ベンチマーク評価のために利用する評価指標は、看護実践の内容(急性期認知症看護尺度)、看護実践の結果、身体拘束、せん妄の発生率等などどとして、レーダーチャート、グラフなどで示し、3年間の変化や実態が把握できるように参加病院にフィードバックを行った。 2.急性期認知症看護におけるベストプラクティスのための研修プログラムモデルの開発:認知症模擬患者によるパーソン・センタード・ケアの導入プログラム研修の開発 本プログラムは、急性期病院の看護師を対象とし、講義、せん妄のある認知症SPセッション、グループ討議から構成された。対象者18人の教育効果の評価であるアンケートとグループ討議の内容を質的分析した。対象者全員がパーソン・センタード・ケアやせん妄に関する理解が深まり、実践で活用したいと回答した。グループワークの内容の質的分析結果では、1)認知症高齢者を1人の人として尊重、2)気持ちに共感するコミュニケーション方法、3)看護チームとしてかかわりを大切にする、4)身体拘束をしない入院中の安全の確保、5)身体症状や思いも含めたアセスメント、6)せん妄に応じた具体的なケアの実践の6つのカテゴリーが抽出された。専門知識と看護実践を統合させて実践を振り返ることから、具体的なケアの方向性が明確となった。
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