研究実績の概要 |
化学物質過敏症(以下CS)看護相談室(学外施設)の利用数は5件であった。相談数減少原因は、①インターネット上のCSに関する情報量の増加、②有料化 の2点であった。患者来訪型の看護相談では、自宅外での活動が不可能な患者(いわゆる重症患者)への支援が欠けていた。 次に、CS患者に関する看護関連の文献は、PubMed検索(キーワード: Multiple Chemical Sensitivity, nursing)では件数が少なく、米国研究者から得た文献を含め20編であった。先行研究における介入は、マインドフルネスの効果を検討した1編のみであった。これらの文献レビューは、平成30年7月の日本臨床環境医学会学術集会で行う予定である。また、看護支援や看護介入研究は皆無であり、先行研究の少なさ、および、看護相談室利用者の偏りから考え、現在の蓄積データによる理論構築は不可能と判断した。 そこで、過去に実施したCS患者に対する3尺度(QEESI,MUIS-C,QUIK-R)の郵送調査(n=354)で得た307名分(87%)の自由記載内容(総文字数191,897文字,約625文字/名)を検討した結果、真の患者のニーズが調査結果に反映しておらず、抜本的な調査が必要と考えた。 さらに、看護支援方法についても抜本的検討を要すると判断し、生命維持の基本的要素(水とミネラル)と運動療法による看護介入研究(n=12)を実施した。その結果、自覚的症状改善を得られた事例は、水・ミネラル群(n=7)と運動群(n=5)において各群2名であり、客観的指標による改善効果は得られなかった。本研究結果も、日本臨床環境医学会学術集会で報告予定である。 これらより、CS患者への看護支援の現状は、早期診断促進,看護診断による生活指導,精神的支援であり、「環境因子による病をもつ患者の看護学的考察」として公表済みである。
|