研究課題
本研究の目的は、ハンセン病回復者・戦争体験者・飢饉や災害を越えた江戸時代の民衆など、艱難を超えてきた先人達の英知を、来るべき災害に活かすことの出来るレジリエンスモデルを構築することである。昨年度までは、モデルの骨子を生成するために、①孤立無援の中で太平洋戦争前後の生活困窮を生き延びたハンセン病回復者の体験、②戦争という圧倒的な暴力に晒され、戦場から内地、内地の病院から郷里へと移動した傷病兵の体験、③飢饉や災害を乗り越えた江戸時代の民衆の記述に焦点を当てた。本年度は、現代の自然災害の現状に即したモデルへと改変するために、新たに、最近頻発している自然災害に関する研究論文・大規模地震で被災した自治体の刊行した資料を収集し、防災に強いコミュニティーをいかに育成するのかの視点で分析を進めた。防災に強い地域コミュニティの育成支援は、住民の災害対応力の促進・災害時にも対応できる住民の組織化・要支援者の把握・行政と他団体の連携構築・地域一体となった防災訓練の実施・情報ツールが使えない時の市町村間の情報伝達システム構築・災害拠点の確保の7項目であった。特に、災害時にも対応できる住民の組織化の具体的支援には、アマチュア無線使用住民の登録、専門的技能や資格を持つ住民の登録、ヘルパー資格の取得勧奨、医療ボランティアの育成が含まれた。また、地域一体となった防災訓練の実施の具体的支援には、要支援者を含めた防災訓練、地元企業や病院、商店街などと連携した防災訓練が含まれた。最新の災害に関する文献研究を加味することにより、ハンセン病・戦争・江戸時代の飢饉や災害といった過去の英知から、より現実に即して必要な支援が示された。
すべて 2018 2017
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)