研究課題/領域番号 |
15K15800
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研究機関 | 鳥取看護大学 |
研究代表者 |
荒川 満枝 鳥取看護大学, 看護学部, 教授 (00363549)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感染症 / 看護学 / 熱帯 / 衛生 / 免疫学 |
研究実績の概要 |
地球温暖化や航空輸送の発達に伴って、これまで日本で症例発生が稀であった熱帯感染症が日本に拡大する危険性が懸念される一方で、熱帯感染症看護についての教育体制が不十分である現状を踏まえて、熱帯感染症のケアプロトコールとその教材開発を目指して、フィリピン共和国での熱帯感染症ケアの方法を調査し、その体系化を試みようという研究である。 平成27年度に研究の地盤固めとして、フィリピン共和国の感染症看護に関する看護部管理者およびその協力者を確保し、調査対象とする感染症13種類を挙げた。また情報網を活かして感染症看護に関する教科書も入手した。 これを受け、平成28年度はマニラを訪問し、13種類の感染症の現地で使用されているプロトコールを得ることができた。また実際にマニラでデング熱など4種類の感染症に関する調査を実施するとともに、フィリピン共和国での感染症や感染症看護の動向について聞き取りを行った。この訪問では、協力者の尽力を受け、効率良く上記感染症の病棟を巡回しデータを取得した。この訪問で、本研究において特に重要な感染症について概ね聴取できたと考える。 しかしながら海外の病院訪問および調査に関しては、困難性も見えてきた。研究協力者と日本側の都合を合わせることが難しく、訪問回数を増やす工夫が必要と考えられ、頻回なメールによる情報交換などの対策を講じている。またフィリピン共和国は政治的の変動期にあり、その中で院内の人事異動等で訪問回数に影響した。さらにフィリピンは国の発展と共に疾病構造が感染症から生活習慣病へと移行している時期であるため、フィリピン共和国以外の国にも出向いて様々なデータを取る体制も必要と考えられ、他の研究で協力しているマレーシアのマレーシア大学付属の看護専門学校の教員より、同様の感染症の症例について情報取得可能か聞き取りするなど、データ不足の際の対策も講じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WHOやフィリピン共和国保健省(DOH)の統計等より、調査する感染症として13種類を挙げた。また関連の教科書についても概ね入手できた。平成28年度は、それらのケアの方法についての詳細なプロトコールを得ることができた。これは、一般の教科書等よりも一歩踏み込んだ内容であるため、調査の際にも参考にし、活用できる。またその13感染症中で4種類については実際に症例の調査を行い、今後の足掛かりを作ることができた。これらの成果は、初年度に関係性を形成した現地の研究協力者の功績が大きい。 協力を依頼しているフィリピン共和国の病院の院長や看護部長とも、良好な関係性の維持のため協力依頼の文書や挨拶等は十分に行っているが、平成28年度は研究協力者の異動や職務の状況でタイミング良く訪問することが難しく、1回の訪問に限られたため、その訪問時に効率よくデータ取得を行った。また、生活レベルの向上と共に、疾病構造が変化しており、院内で見られる感染症の種類がやや変化してきており、訪問時に調査できる症例が限られていた。特に重要な疾病についての調査は叶ったが、今後調査時期の工夫が必要となる。 同様のデータ取得に関する困難性が今後も生じると考えられるため、年度内に他の国でも同様の聞き取りができないか、可能性を探索したところ、マレーシアのマレーシア大学サバ校医学部の協力者より当該校の附属看護専門学校を紹介され、伺ったところ、必要な時は協力要請可能との回答を得た。またその際に、マレーシアの感染制御に関するマレーシア国内の資料をいただくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、フィリピン共和国で更に調査を行い、出来る限り多くの症例に関する調査を継続したい。そのために、前回訪問後より、研究協力者と頻回にメール交換を続け、先方の病院の状況の情報収集や訪問のタイミングが上手く図れるよう工夫をしているところである。日本側の協力者との渡航調整も同様で、タイミング良く渡航し、これまでにとれていないデータが取れるよう善処したい。教科書やその他の看護に関する資料に関しても、継続して情報収集し、アップデートされているものについて入手したいと考える。 マレーシアに関しては、フィリピンで十分に調査できない場合に聞き取り等をさせてもらえるよう、関係性を継続させていきたい。そのために、フィリピンと同様のメール等での連絡を継続し、出来る限り訪問も果たしたいと考える。 いずれの国の調査にしても、本研究は海外の施設での研究となるため、文化的な相違や国情の変化を適切に理解し倫理的な問題が生じないよう、国内外の研究協力者の対話を怠らないようにして、連携を維持していきたい。 今年度は最終年度であるため、今後の研究の発展と方向性についても研究協力者と十分に議論したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
マニラ訪問を1回しか実施できなかったこと、また英語が堪能で感染症看護を理解できる人材を雇い入れることが今年度も難しく、人件費の使用に至らなかったが、他大学の研究協力者と共にマニラを訪問することで埋め合わせは行えた。国内の研究協力者の旅費1名分もスケジュールの都合で発生しなかったため、次年度の活用としたい。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの経験より、平成29年度に新たに人材を雇用することは難しいと考えられるため、当初人件費として計画していた分については、国内の研究協力者と効率良くマニラ訪問することに充当したいと考える。場合によっては、マレーシアへの渡航にも使用したいと考える。
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