末梢静脈穿刺関連合併症で散見する皮下出血のスキンケアを検討するため、皮下出血部と非皮下出血部の皮膚バリア機能を比較した。 対象者は65歳以上の入院患者で、調査部位は前腕部に生じた皮下出血部とそれに隣接する非皮下出血部とした。計測は、皮膚色・角質水分量・皮脂量・粘弾性・経皮水分蒸散量・pHとした。分析は、出血部と非出血部の各計測値を比較した。倫理的配慮は石川県立看護大学倫理委員会の承認を得て実施した。 参加者は50名、平均年齢は84歳 (四分位範囲:77-89)であった。1)平均経皮水分蒸散量は、皮下出血部で8.38g/h/m2(四分位範囲:7.9-10.9g/h/m2)、非皮下出血部は7.71g/h/m2 (四分位範囲:5.98-9.77g/h/m2)で有意な差はなかった(p=.075)。2)平均角質水分量は、皮下出血部では39.9(四分位範囲:34.0-45.4)、非皮下出血部では43.3(39.1-50.1)で皮下出血部が低い傾向があった(<.001)。3)皮脂量は両部位共に0μg/cm2であった。4)平均粘弾性は、皮下出血部で0.22(四分位範囲:0.17-0.31)、非皮下出血部では0.27(四分位範囲:0.21-0.39)で皮下出血部が有意に低かった(p=.011)。5)平均pHは、皮下出血部で5.52(四分位範囲:5.24-5.98)、非皮下出血部では5.28(四分位範囲:4.98-5.65)で皮下出血部が有意に高かった(p<.001)。 皮下出血部は、粘弾性と角質水分量が低く水分保持能が低い可能性がある。以上より、皮下組織内の出血が表皮皮膚バリア機能に影響しているといえ、臨床では繰り返し皮膚の乾燥につながるアルコール消毒も影響している可能性がある。末梢静脈穿刺による皮下出血がある場合には外部刺激の保護・保湿ケアを考慮した方が望ましいと考えられる。
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