研究課題/領域番号 |
15K15804
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
嶌田 理佳 名古屋市立大学, 看護学部, 准教授 (40331673)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | Mask / シミュレーション / 看護教育 / 演習 / 模擬患者 |
研究実績の概要 |
本研究は新しいシミュレーション教育技法であるMask-Edの日本への導入と開発を目指すものであり、今年度はこれに向けた準備を進めた。Mask-Edの導入にあたっては開発者のKerry Reid-Searl教授が主催するワークショップに参加し、修了をもって使用許諾を得る必要がある。このため、平成27年8月15日~平成27年8月25日の日程でオーストラリア ロックハンプトンにあるセントラル・クィーンズランド大学を訪問し、同地において開催されたワークショップに参加した。ワークショップではReid-Searl教授から直接、次のような技法に関する知識と技術の指導を受け、日本での使用許諾を得ることに成功した。What is MASK-ED™ , The history of MASK-ED™•How does MASK-ED™ work?, Demonstration of application, Advantages and challenges of using simulation, The core elements of MASK-ED™, Building a character, Ethics and homework. 期間中にはReid-Searl教授と同僚のTrudy Dwyer氏、Deborah Friel氏も交えて演習で活用するシナリオの開発を行うとともに、今後の日本への導入とプログラム開発に関する打ち合わせも行い、これを共同研究として発展させることを申し合わせた。 9月以降はアメリカのマスク制作会社であるHollywood Maskmastersの協力を得てマスクの開発に着手し、これを完成させた。並行して、日本での展開に向けてKerry Reid-Sear教授から助言を得つつ、シナリオ作成および指導技法の強化に取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3か年計画の初年度であった平成27年度は主に研究計画実施に向けた準備を中心に進めた。具体的にはまず、Mask-Ed技法の習得を目指して開発者であるKerry Reid-Searl教授が主催したワークショップに参加して技法を詳しく学び、単独での実施が可能となるレベルまで理解を深めて使用許諾を得た。また、研究遂行に欠かせない演習計画やシナリオ作成についての情報収集と企画も行い、次年度以降に学生を対象とした授業の中で演習を展開する準備も進めた。 Kerry Reid-Searl教授の使用許諾を得た平成27年度後半は、アメリカにあるマスクの制作会社の協力を得てマスクの年齢・性別、外観上の特徴などを決定してマスクの開発を行い、これを完成させた。マスクの制作と並行して、日本での展開に向けてKerry Reid-Sear氏から助言を得つつ、引き続きシナリオ作成および指導技法の強化に取り組んだ。平成27年度はMask-Edの日本への導入と開発に必要な準備を進め、基礎を固めることができ、計画通りに研究を進行遂行させることができたと評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
マスクを使用して行う授業を選定する。授業の学習目標に合わせて、マスク患者の性格や人柄といった人物背景や、既往歴、現病歴などのストーリーを考案し、これをもとに学年別・科目別のシナリオを作成して実施する。 本格実施に先駆けて、倫理審査を経た後にマスクおよびシナリオを使用して、5名の学生研究協力者を対象にプレテストを行い、Mask-Edを実演する。ここで得られた学生の反応や感想、評価を基に研究者間で検討してシナリオを修正し、再テストを重ね、技術的に確立した段階で演習を実施する。学部2年生には周手術期看護を教授する科目の中で、術直後の観察とケアをテーマとする。学部3年生には周手術期看護の臨地実習学内オリエンテーションの中で、手術前に不安を強く訴える患者や術後疼痛を強く訴える患者への対応場面を設定して対応を学ぶ演習とする。学部4年生には総合的な看護技術演習において、アセスメントに必要な情報収集能力と対応能力を向上させることを目標とした場面などを設定する。 作成したシナリオについては開発者や海外協力者と共有し、随時指導内容の妥当性と実施上の留意点に関する助言を受け、指導技術の強化を図る。演習効果の評価として、介入群にはMask-Edによる演習の感想や改善点を聞き取り、得られた回答を質的に分析する。最終的にこれまでの演習を総合評価し、標準化した上で次年度以降の演習内容を検討する。 Mask-Edという新しい教育技法の効果に関する研究成果については、学会や学術雑誌へ発表する。また、Mask-Ed研究会を設立し、ホームページ等を通じて効果的な看護基礎教育プログラムとして情報を発信する。 最終年度となる平成29年度には新しい演習科目において前年度に考案したMask-Edを実施し、教育方法の標準化と評価を重ねる。Mask-Edの普及を目指して社会への情報発信も引き続き活発に行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マスク製作は業者との打ち合わせを10月に開始し、その後発注を経て入手までに数ヶ月を要した。製作費用のほかに輸送料、関税なども必要であることがわかっていたが、納品時期が年度末に近かったため、予算超過を懸念して支出を控えたことから、次年度に繰り越すこととなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度中に購入予定であったビデオレコーダー等の撮影機器や演習に使用する模擬患者の病衣の購入にあてる計画である。
|