平成30年度は、これまでの調査ならびに分析から作成した試作版について、追加的に必要となった理論的検討と、それに伴う尺度の再構築を実施した。研究着手当初は予定していなかった理論的検討が必要となった理由は、尺度が対象とする範疇として想定していたキャリア中期の看護師だけでなく、育成に携わる看護師にはキャリア後期の看護師も相当数みられ、キャリア後期の看護師に特異的な下位尺度が存在していることが明らかとなったためである。まず、平成29年度までで整理された下位尺度について、項目としての適切性の観点から追加的な表現の精緻化の要否を吟味したうえで、前年度までの取り組みで課題として残していた以下の点について、部分的な再分析を含めて検討した。その課題は「表現として部分的に難解で回答困難とされた項目」「語句の選択あるいはディクションにより複数の意味として理解された項目」「質問の主体と客体の関係が不明瞭で捉え方により回答が異なり得るとされた項目」「質問項目全体的に回答が困難さを伴う項目」の存在であった。尺度の再構築を実施した結果、将来的な世代継承性の発現に寄与する成年前期に基盤となる経験である「受けた育成への肯定的意味づけ」「絶えざる自己研鑽」「育成者としての葛藤克服」の3点と、キャリア中期以降における世代継承性の発現である「恩義の世代超越的返済(「返済上の葛藤」を含む)」「後継者への職位の発展的委譲」「組織固有のDNAの伝承」として下位尺度が構成された。
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