研究課題/領域番号 |
15K15809
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓子 名桜大学, 健康科学部, 教授 (60224573)
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研究分担者 |
平上 久美子 名桜大学, 健康科学部, 准教授 (00550352)
鬼頭 和子 名桜大学, 健康科学部, 助教 (90714759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハンドマッサージ / 精神疾患患者 / ケア技術 / 精神看護 / 代替補完療法 |
研究実績の概要 |
ハンドマッサージ(以下HMとする)に関する文献検討を行い、HM実施についてのプロトコールを作成した。片手5分間ずつの両手10分間、無香料のオリーブオイルを用いたいわゆる軽擦法により圧をかけず実施部位は手指先から手首までの範囲とした。入院中の統合失調症患者4名に予備調査としてプロトコールに基づくHMを実施した。介入中の患者の言動を質的記述的に分析検討した。その結果、対象者に共通する特徴として、視線はHM施行者の顔に向き、施行者との相互交流は成立せず一方的な話しかけが続いた。以上を踏まえ、健康な成人を対象にHMによる反応を測定し、その結果を精神疾患患者へのHMの反応とを比較することにより、HMによる効果をより詳細に検討できるものと考えた。 そこで、健康な成人14名を対象にHMを実施した。HM中の研究者への対応および姿勢、視線等については参加観察をし、記述データとして残し、実施後に面接調査を行い質的記述的に分析した。その結果、健康な成人の特徴として視線はHM施行者の手元に置かれ、圧のかかるHMを予測し、全員がHMを心地よく感じていた。対象者は何が始まるのか不安と期待の入り混じった気持ちでHMを受けるが、片手が終了すると同じことの繰り返しと予想し、後半はリラックスしていた。以上より、健康な成人はHMを通して施行者の会話への不参加態度と自身への専心を感じとり、それに同調した姿勢や態度をとっていた。Kendon (1990) は相互作用の中での調和が互いへの「開かれている」感覚をもたらすとしているが、視線や姿勢は相互作用の調和を評価する一つの指標になる可能性が示唆された。 以上を踏まえて、健康な成人である対象者への面接調査から明らかになった複数の修正点についてHMのプロトコールの見直しを行った。次年度以降はこれに基づき、精神科入院患者へHMを実施しその効果を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料文献等よりプロトコールを作成し、実際に精神科病棟でハンドマッサージを実施する予定であったが、フィールドワークの結果より、ハンドマッサージにおける精神疾患の無い健康な成人の言動の観察を通して、ハンドマッサージ実施にあたってのガイディングの内容や方法、環境整備について明確化しておく必要性が確認された。このため、先に健康な成人を対象にハンドマッサージを実施しプロトコール作成に当たったため、当初の計画が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
精神科病院2施設からの研究協力の同意を得た上で各施設10名程度の精神疾患患者を対象として、研究者が研究協力依頼の説明を行い、研究協力への同意を得る。プロトコール通りに各研究協力者に対しハンドマッサージを行を用いたケア技術を実施し、実施前後の評価(主観的心地よさについて数値評価スケールを用いて評価し、生理的指標としては血圧,脈拍,唾液アミラーゼの測定)を行う。患者の状態(表情,言動,姿勢,動作等)および、プロトコールの修正や加筆が必要な場合にはメモを残しておく。数値データは統計的検定を行い、質的データは記述的分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた精神科病院における精神疾患患者への介入の前に、健康な成人を対象としたハンドマッサージの実施によるプロトコールの評価および修正の必要性があったため、そちらを優先しデータ収集を行ったため、精神科熟練看護師からのプロトコールへの評価のための謝金の使用がなく当初の予定より予算執行額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
精神科病院でのハンドマッサージの実施および評価をこれから実施する予定であり、そのための準備を行う予定である。またプロトコールについての評価を精神科熟練看護師から得るため、謝金として使用する予定である。
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