わが国の急性期精神医療・看護・ケアの現場では、精神疾患をもつ患者への対応による従事者のさらなる疲弊が予測されている。本研究では、個人のストレス耐性に応じたコミュニケーション・プログラムの有効性を検討した。まず、福祉・医療分野での対人支援業務におけるコミュニケーションに関し、多面的かつ学術的検討を重ねてきた。定量的および定性的手法を合わせたミックス法による研究が妥当である可能性を指摘できたが、評価指標の特定が今後の大きな課題であった。すなわち、対人支援時、職場内、多職種間にコミュニケーション場面を分類し、個々人のコミュニケーション・スキルを的確に評価しフィードバックすることが、あらゆる場面での良好なコミュニケーションに寄与し、引いては利用者・患者、組織にも関連する可能性があることが明らかになった。本研究では、コミュニケーションに関する個々人の対応をスキルと定義し、かつ定性的な評価も重視することから、スケールによる一律な評価は適切でないと判断するに至った。すなわち、多職種連携場面でのコミュニケーションは、一定レベル以上の知識と技能を必要とされることが容易に想像されるが、我々が着目すべきは、個々人のレベルに応じた対応パターンを特定し、フィードバックすることで現場に寄与することであった。特に、個々人の首尾一貫感覚やパーソナリティに大きく影響を受けるコミュニケーションは、同じ業種であっても全員が同じ水準や次元にあるわけではない。福祉・医療分野での業務遂行には、必要とされる水準が当然ながら存在するが、重視すべきは利用者や従事者自身を含めたすべての関係者にとっての良好なコミュニケーションである。そのためにも、画一的ではないテーラーメード型で、多職種連携にも強化したコミュニケーション・スキルの習得を目指すことが、今後の医療・看護・福祉従事者にとって重要であると考える。
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