研究課題/領域番号 |
15K15816
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研究機関 | 松蔭大学 |
研究代表者 |
風岡 たま代 松蔭大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50224382)
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研究分担者 |
立野 貴之 松蔭大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50564001)
舘 秀典 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (90402148)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療安全 / 看護基礎教育 / 安全教育 / シミュレーション教育 / ICT教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、看護基礎教育での医療安全教育に活用するシミュレーション教育の教材として、ゲーミフィケーションで体験する教材を開発し、それをICTで運用するシステムを構築することである。以下が28年度の成果である。 1)27年度に行った本邦での先行研究の成果を整理した結果を、日本看護学会で発表したあと、論文を作成した。2)27年度に作成した教育成果を判定するシステムを使用するために、作成した看護場面のシミュレーション事例のシナリオを作成した。作成したシナリオの妥当性は、専門看護師1名と看護教員4名の協力を得て討議した。3)2)で作成したシナリオを活用して、看護教員が役者をつとめたビデオ撮影を行い、編集中である。4)2)で作成した成果判定システムの精度向上のため、教育システム情報学会の特集論文研究会でプレゼンテーションし、教育システム研究の専門家のディスカッションを受けた。5)ゲーミフィケーションで活用するシミュレーションに盛り込む必須内容の示唆を得るために、病院の医療安全室の専任看護師への半構成面接を終えて、その結果を整理した。6)専任看護師への面接の結果、医療安全の重要教育内容として、コミュニケーション能力の育成が必須であることを確認したことと、医学部でのOSCE(OSCE(Objective Structured Clinical Examination)の実際を見学したことにヒントを得て、研究分担者を中心に、ICTを活用したロールプレイングの学習システムの構築を行った。その内容を、大学ICT連絡推進協議会2016年度年次大会で発表した。7)研究分担者を中心に、ゲーミフィケーションに活用するコンテンツが現在の予算でどの程度作成可能かの見積もりを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画は概ね順調である。 1)28年度は、27年度作成した教育成果判定システムの試験運用が目標であったが、①作成した事例の看護場面のシナリオを作成した、②シナリオに盛り込んだ事故要因の妥当性や重要性を、専門看護師1名と看護教員4名で審議した、③システムに使用する映像を、作成したシナリオで看護教員が役者となってビデオ撮影し、3方向からの映像の編集中である、④このシステムの精度向上のために、教育システム情報学会の研究会で教育システムの専門家に意見を求めた結果、現在のシステムに実際の活用での修正を加えれば、他の動画システムとは違う学習支援が行えるという意見を得た。 2)27年度作成した4事例10場面のシミュレーションで、ゲームの難易度を上げて進むイメージで、システム業者と研究分担者を中心に相談を行った結果、10場面のコンテンツを作成するには、費用面の限界があることが明確になった。 3)ゲーミフィケーションに盛り込む教育必須内容の確認のために、病院の医療安全室の専任看護師が認識する新人の実態と新人教育についての面接調査を終了し、その内容を整理した。その結果、盛り込む必須内容は、行う看護行為の手順の原則と、看護行為執行時のコミュニケーションであることが明らかになった。 4)ARを使用したゲーミフィケーションではリアルなコミュニケーションを盛り込む限界が有り、コミュニケーション能力の育成のために、ゲーミフィケーションと同時にコミュニケーションを振り返ることができるロールプレイング教育の支援システムが必要と考えた。研究分担者を中心に、学生自身のロールプレイの様子をリアルタイムで配信して、リアルタイムで映像を見ているオブザーバー学生が気づきをチェックし、気づきと映像とマッチさせた助言ができるロールプレイング教育支援システムを開発した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、1)28年に作成した教育成果評価システムに使用するビデオ映像の編集を終了させ、そのシステムの有効性を検証すると同時に修正を行う。2)構築したロールプレイング教育の支援システムに必要なロールプレイングのためのシミュレーションのシナリオを作成する。3)病院の医療安全室専任看護師への面接調査の結果で得られた内容を盛り込んで、4事例10場面のうち、2事例2場面のシミュレーションのシナリオを作成する。シナリオに盛り込む内容の妥当性の検討は、臨床看護師2名と看護教員3名にも協力を得る。4)研究分担者を中心に、3)で作成したシナリオに必要なコンテンツを作成し、アプリでの運用を試行する。試行には、学生と新人看護師の協力を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していたゲーミフィケーションのシステム作成に関わる支出を次年度に延ばし、ゲーミフィケーションを使用した教育前後の教育評価システムが運用できるようにビデオ撮影や映像編集を優先した。また、病院の医療安全室の看護師への面接調査をもとに、自己のコミュニケーションを振り返ることができるロールプレイング教育を支援するシステムの構築を優先した。ビデオ作成などに協力を得た臨床看護師や看護教員への謝金は、事前のシナリオ配信などで調整時間の短縮を行い支出を抑えることができた。教育成果評価のシステム開発や、ロールプレイング教育の教育システム開発は、研究分担者が実施したため予定より支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、作成予定の10場面のうち2事例2場面を用い、それぞれの看護場面のシナリオを作成して、ゲーミフィケーションシステム開発に、物品費(コンテンツ作成、サーバー管理費)、協力を得た看護教員や臨床看護師とプログラマーへの謝金、調査結果を発表するために学会参加を予定しているので、旅費を使用する。また、3年間の成果を整理する冊子を作成することにも物品費を使用する。
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