本研究は、保健医療福祉制度における看護政策に関する副院長の知見の病院経営への影響を明らかにし、その知見を基にした病院経営参画モデルを構築することを目的としている。 平成27年度は、国内の看護副院長14名に対して半構成的面接を行い、逐語録をテキストマイニングにより共起ネットワーク分析を行った。また、米国のマグネットカンファレンスに参加し、マグネット病院の認証を受けている看護管理者の情報収集を行った。 平成28年度は、前年度の調査結果から質問紙を作成し、全国の病院で看護副院長職に在任している者を対象に、郵送によるアンケート調査を行った。対象者は、ホームページ等で看護副院長の在任が確認できた182病院とした。回答数は71通、有効回答数は69通(37.9%)であった。調査結果は、病院規模は「500床以上1000床未満」が37名(53.6%)と最も高く、看護部長歴は平均6.8±5.9年、看護副院長歴は平均3.8±3.2年、看護副院長の所管する業務では、「看護部門の統括」が66名(95.7%)と最も高く、副院長としての取組は、「病院職員の労働環境の改善」、「看護職の教育体制の強化」がともに52名(75.4%)と最も高かった。この結果から、看護副院長はそのキャリアを重ねながら、病棟の再編成や新たな診療報酬算定を通して経営改善に寄与しつつ、労働環境の改善や教育体制の強化、外来看護・訪問看護・地域支援の充実等を通して、医療の質の維持・向上に努めている様子が示唆された。 米国調査は、マグネット病院であるOSFHealth care 組織を訪問し、看護部門全体の統括者等3名看護副院長に対して面接調査を行い、逐語録を質的に分析した。その結果、マグネット病院の認証を受けるために中核的には働き、看護部内の人材育成に尽力するのみではなく,組織横断的に職種,他の部門との連携に尽力していることが明らかとなった。
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