研究課題/領域番号 |
15K15821
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研究機関 | 西南女学院大学 |
研究代表者 |
浅野 嘉延 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (60271110)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 看護教育 / 指導マニュアル / 疾病学 |
研究実績の概要 |
1.全国の看護教育機関における疾病学の講義の現状把握 看護系大学の100校(国立30校、公立20校、私立50校)にアンケートを送付し、37校から回答を得た(回収率37%)。短期大学は10校に送付して1校から(回収率10%)、専門学校は200校に送付して50校から回答を得た(回収率25%)。臨床医学(疾病学、薬理学、検査学)の講義数は大学で88.3コマ(90分)、専門学校で108コマ(90分)であった。疾病学を主に担当している教員は大学と専門学校ともにほとんどが医師であったが、看護教育を専門としてない医師(関連病院の勤務医、医師会の開業医など)が大学では25%を専門学校では90%を占めていた。このアンケートより看護教育機関における臨床医学の講義数が(医学部と比較して)極端に少ないこと、看護教育を専門としていない臨床医が疾病学を担当している学校が多いことが判明した。 2.看護学生が習得すべき疾病学の知識の一覧表作成 既存の疾病学のテキストなどを参考に、疾患分野別に「解剖生理」「症候・検査・治療」「主要疾患」において講義をするべき項目の一覧表を作成し、それぞれの項目に対して到達レベルと該当する看護師国家試験出題基準を示した。到達レベルは「病態を十分に理解して応用できる」「病態を理解して説明できる」「概念を理解する」の3段階で表した。現在、地元医師会の協力を得て、看護教育機関で疾病学を担当している医師に一覧表に対する意見を聴取している。 3.教育指導マニュアルの作成 看護教育を専門としていない臨床医がオムニバス形式で疾病学の講義を行う際の注意点を作成した。また、疾病分野別に「解剖生理」「症候・検査・治療」「主要疾患」における指導のポイントを作成した。指導の実践例を作成するための臨床サンプルを収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.全国の看護教育機関における疾病学の講義の現状把握 全国の看護教育機関に対するアンケート調査は解析を含めて終了しており、研究計画とおりである。ただし、助成金額から研究計画の一部を見直し、アンケートに必要な経費を減額するために送付する教育機関の数を減らした。全国の看護教育機関の約半数に相当する看護系大学100校、短期大学10校、専門学校200校を地域に偏りがないように選抜し、アンケートを送付した。合計で88校から回答が得られ、全国の疾病学の講義の現状を解析するには十分なデータ数と判断した。これによって、全国的に看護教育機関における臨床医学の講義数が極端に少ないこと、看護教育を専門としてない臨床医が疾病学の講義を担当している学校が多いことなどが明らかになった。 2.看護学生が習得すべき疾病学の知識の一覧表作成 研究計画のとおりに、既存のテキストなどを参考に、看護学生が習得すべき疾病学の知識の一覧表を作成した。さらに、(研究計画を発展させて)項目ごとに到達レベルと該当する看護師国家試験出題基準を明示する工夫を行った。一覧表に対する意見を聴取するために、看護系学会などの協力を得ることが計画よりやや遅れている。しかし、地元医師会の協力を得て、看護教育機関で疾病学を担当している臨床医の意見の聴取は開始している。 3.教育指導マニュアルの作成 臨床医がオムニバス形式で疾病学の講義を行う際の注意点、疾病分野別の指導のポイントなどを既に作成しており、この点では当初の研究計画以上に進展している。指導の実践例に使用する臨床サンプルについては医療機関の協力を得て収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に作成した「看護学生が習得すべき疾病学の知識の一覧表」に関する医師や看護師の意見を聴取し、それを参考に追加修正を行う。この一覧表に、既に作成している一般的な注意点や指導ポイントを追加し、また収集した臨床サンプルを用いて指導の実践例を作成して、教育指導マニュアルを完成させる。 教育指導マニュアルをアンケートや意見聴取に協力を得た看護教育機関や医師会・学会などに配布して、使用した感想・意見のアンケート調査を行う。 本研究を契機に、疾病学以外の分野でも教育指導マニュアルが作成され、全国の看護教育機関で一定の教育レベルが確保されることを期待する。
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次年度使用額が生じた理由 |
作成した「看護学生が習得すべき疾病学の知識の一覧表」について、まずは地元医師会の臨床医の意見を聴取することにした。そのため、中央の看護系学会や医師会に協力を依頼するための旅費が平成28年度に持ち越しとなった。また、教育指導マニュアルの実践例に利用する患者サンプルを収集・整理保存する作業が平成28年度にまたがったため、必要となる備品の一部の購入が平成28年度に持ち越しとなった。平成27年度に行ったアンケート調査の送付先を減らし、学生アルバイトを多用するなど経費を節約した。平成28年度に行う教育指導マニュアルの印刷と発送に予想以上の費用が必要となることが判明したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
「習得すべき知識の一覧表」「指導のポイント」などに対する看護師や医師の意見を幅広く聴取するため、中央の看護系学会や医師会に協力を依頼するための交通費として使用する。患者サンプルが集まりつつあるため、平成28年度はそれを継続して整理保存するためのパソコンなどの購入を行う。また、当初の計画以上に経費が必要と思われる教育指導マニュアルの発刊に使用する。
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