研究課題
本研究の目的は、がん患者が自分の健康状態を振り返りながら、健康と就労に関するニーズを客観的に把握するために作成された健康自己評価ツールの利用が、働くがん患者のQOLに与える効果を検討することにある。H 29年度は、健康自己評価ツールを組み立てるために行った就労調査の分析結果を考慮したうえで実際にツールを組み立て、そのツールをタブレット型PCに搭載し、そのツールを用いて利用可能性について外来通院中の乳がん患者を対象に調査を行った。90名の外来乳がん患者に調査協力を依頼し、88名が医師による診療前にタブレット型PCに搭載された健康自己評価ツールに回答した後に約30分間のインタビュー調査に答えた。そのうち66名は診察後の調査票への回答を行い、1カ月の事後調査の依頼を受け取った(現在最終回収待ち)。66名の平均年齢は55.3(SD.9.0)歳、診断から調査までの経過日数は平均75.9(SD.70.7)カ月であった。58名(57.6%)が定期あるいは不定期の職業に従事しており、28名(42.4%)は専業主婦であった。健康評価指標として用いた症状、症状に関連する支障、身体機能、心理機能、生活に関連する満足度の調査依頼時点における測定値については、既存の研究の値と比較して有意差はないが、どの指標も高い値を示した。健康評価ツールとしての操作性および健康アセスメント機能に対する評価は非常に良好な得点を示したが、健康アセスメント結果の利用に関する評価は中庸な結果となった。今後、縦断データの結果を合わせ、対象者の背景や病気属性との関連を分析に加えて、最終的な評価を実施する計画である。