開心術を受ける患者のアドヒアランス尺度を開発するために、国内外の文献レビューを実施した。文献レビューからは周術期におけるリスク予防アドヒアランスに関しての論文は存在せず、全てが慢性疾患患者を対象にしたものであった。またアドヒアランスという概念は、療養行動を含めた形で定義がされており、療養目的によって、服薬アドヒアランス、運動療法アドヒアランスなどに定義されていた。このため、本研究のアドヒアランスを定義づけるならば、「開心術を術前リスク予防アドヒアランス」ということにした。以上の研究を第12回日本クリティカルケア看護学会で発表した。文献レビューではアドヒアランスの構成要素として「患者の知識や認識」「医療従事者との関係」「セルフケア行動」「実際の行動」の4要素が明らかとなった。しかしこれらは慢性疾患患者が対象であったため、開心術術前患者6名に対してインタビュー調査を実施し、開心術前リスク予防アドヒアランスの構成要素として、「疾患や症状に対する認識」「手術や手術リスクに対する認識」「リスク予防行動」「医療者や家族からの支援」「リスク予防行動の遂行」5要素が明らかとなった。この結果を第45回日本集中治療医学会学術集会で発表した。またこの結果を踏まえて、5要素30項目からなる「開心術術前リスク予防アドヒアランス尺度(案)」を作成し、心臓血管外科領域での従事の経験を持つ専門看護師と研究者からなる専門家会議を開催し、項目の洗練を実施した。この尺度開発のプロセスは英文投稿予定である。専門家会議を経た「開心術術前リスク予防アドヒアランス尺度(案)」に関しては、信頼性・妥当性の検証のため600人を対象とした研究の実施に向けて倫理審査受審中である。
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