研究課題/領域番号 |
15K15839
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辻 恵子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 准教授 (30338206)
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研究分担者 |
角田 美穂 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 腫瘍診断・予防科, 研究員 (60347359)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | shared decision making / 遺伝看護 / プログラム開発 / がん / 包括的遺伝子検査 |
研究実績の概要 |
27年度は遺伝医療における現状の問題点の再抽出、意思決定に必要な情報の厳選を主たる目的として、①文献検討、②学会・セミナー参加、③web検索を実施し、次のことが明らかになった。 欧米では、生殖細胞系列遺伝学的検査は単一遺伝子から複数の遺伝子を一度に解析するMulti-target 遺伝子検査に移行しており、実施数の70%を占めている。日本においても、研究レベルで当該検査が可能となり、臨床で活用するための精度や基準が検討されている。しかし、海外では遺伝学的検査の結果をもとに雇用や医療保険の加入・支払い等で差別問題が生じており、米国では遺伝情報差別禁止法があるにも関わらず訴訟の数は増加している。日本においても遺伝的差別の報告があるが、全体像を把握する手段がなく、Multi-target遺伝子検査の導入による影響が懸念される。海外の動向は、より多くの遺伝子を読み、遺伝情報と臨床情報を統合共有し有効活用する方向へ、遺伝情報にアクセスする利用者側の権利を尊重する方向へと向かっている。遺伝的差別等のリスクを伴う新しい技術の活用において利用者の主体性が重要視されているが、これまで医療者が遺伝学的検査の適用対象や調べる遺伝子の範囲を決めてきた日本において、医療者・利用者双方に新たな認識へのシフトが求められている。 以上のことから、意思決定に必要な情報は、i. Multi-target遺伝子検査に含まれる遺伝子の機能・遺伝の仕組み等の基本情報、ⅱ.遺伝学的検査を利用する意義に関する情報に加えて、ⅲ.遺伝的差別等遺伝情報が明らかになることで抱えるリスクと予防対策に関する情報であることが確認された。 現在、利用者(当事者)の主体性を尊重する学びのスタイル-問題の発見から解決まで主体的参加を導く方法論の選定を行い、医療者と利用者の対話を促進するための情報活用ツールの作成を一部開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、平成27年度の到達目標をプログラムの確定と媒体作成(情報活用ツールの開発)までを計画していたが、当該研究の背景となる現状における課題および先行研究の整理に時間を要した。現在、情報活用ツールの試作の開始過程にある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、①情報活用ツールの作成、②決定支援プログラムの全体像と実施方法の確定・評価指標の精錬を行う。具体的内容は下記のとおりである。
①平成27年度に収集した情報・文献はレビューとしてまとめ、公表する。それらの根拠を基盤として情報活用ツールを実務経験者および遺伝医療にかかわる専門家とともに吟味し、完成させる。 ②平成28年度実施計画に沿い、前項で作成したプログラムの使用を含む、決定支援プログラムの具体的内容・実施方法を検討する。プログラムを使用する看護者への事前のガイダンス・教育に関して方法を検討、決定する。①のレビューの結果をふまえ、当該プログラムの評価指標を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究の背景(現状での課題)に関する情報収集(学会参加)に必要な旅費が、平成28年度4月に支出予定となったこと、またプログラムのコンテンツである意思決定支援ツール(情報活用ツール)の開発が遅れたため、主たる活用媒体(パーソナルコンピュータ、iPadなど)の購入を延期したこと、開発に必要な諸費用(専門的知識の提供など)の支出を次年度に見送ったことが主たる理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、プログラムの開発(プログラムコンテンツの作成)とプログラム評価のための指標を確定することから、情報整理のための人件費、媒体の作成、専門的知識の提供(謝金)を主たる使途として計画している。
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