研究課題/領域番号 |
15K15844
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
跡上 富美 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20291578)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 妊孕力 / 自己認識 / 生殖年齢 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、本年度は30歳代女性を中心にインタビュー調査を実施し20歳代女性との妊孕力に関する認識の違いについて分析を行った。その結果、20歳代女性たちは現時点での自己の妊孕力をほぼ100%と認識していたが、30歳代になるとその認識は50%前後まで低下していることが明らかとなった。これは30歳になったばかりの女性たちも同様であり、妊孕力の自己認識は年齢による判断が大きく効いている実態が明らかとなった。 一方で、自己の妊孕力について年齢要素を省いたときには、依然として100%に近い値で「自分には妊娠する力がある」を回答する女性が多かった。その理由として、「月経があること」を挙げていたが、実態としては月経周期の乱れや中強度の月経随伴症状を有するなど妊孕力に影響を与える身体的問題を有していた。これは20歳代女性と同じ傾向を示すものであり、依然として生殖年齢にある女性たちの妊孕力の自己認識は主観的判断のみが多かった。また、これらの女性たちにおいては婦人科受診の経験が乏しく調査対象の中で婦人科受診を経験を有する者は2名であった。このうち1名は挙児希望のための受診であり、残り1名はがん検診のための受診であったが、残りはこれまで一度も婦人科受診経験を有しておらず、依然として婦人科受診の低さの実態が明らかとなった。 妊孕力に関する若い時期からの教育が必要であることが示唆された。この結果については、20歳代女性の妊孕性の自己認識について論文としてまとめ発表予定である。 しかしながら、本調査では30歳代前半女性の特徴のみをとらえたものであり、今後妊孕力が急激に低下するといわれている30歳代後半の妊孕力の自己認識について明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は調査最終年度であり、生殖年齢にある女性の妊孕力の自己認識の実態を明らかにするとともに、AMHの測定を行い認識との乖離状態を明らかにすることを目的としていた。面接調査についてはHPの開設が遅れ、スノーボールサンプリングで30歳代前半女性までの実態は明らかとなったが、30歳代後半女性のサンプルが得られていないため、生殖年齢にある女性の妊孕力の自己認識の特徴が明らかとなっていない。30歳代後半女性は社会的に見て有用な労働人口世代であるとともに、近年は女性の社会進出も促進されているため企業においても第一線の戦力となっているため、なかなかデータ収集にたどり着くことが厳しい対象群であると考えられる。また、本年度は学術集会等の主催も重なったため、研究遂行がままならなかった状況も重なり研究の進捗は著しく遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗は著しく遅れている。これを打開するために本年度開設した研究用ホームページにさらに改良を加え、ホームページからの研究結果の発信を行い広く研究の趣旨を社会に伝えるとともに、研究参加者の世代に対して研究募集を行う予定である。特に、30歳代後半女性の研究参加者をHPとスノーボールサンプリングを駆使して募るとともに、企業等との連携を図りながら研究に対する興味を喚起し研究参加へと促しながら、研究を遂行していく予定である。 また、研究参加者に対しては面接によるデータ収集とともに、客観的な妊孕力指標となるAMHを測定するとともに妊孕力に関する知識を問う質問紙調査を行い、生殖年齢にある女性たちの妊孕力の自己認識の実態像を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の遅滞により当初のデータ収集数に至らなかったことと、計上していたホームページの作成経費が自己作成により安価に作成が可能となった。この予算については、次年度でのデータ収集分析とAMH検査に利用するとともに、同時に行う予定の質問紙調査の費用に充てる予定である。
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