現地での倫理審査の承認が遅れているため、胎動計を使用しての調査には進むことができなかった。しかし、現地医療者との関係を保つために今年度も研究協力施設を訪問し、準備段階として、調査に当たって必要になることの確認を再度行った。調査でのハード面はこちらで準備できるが、ソフト面については現地助産師の協力が必要となる。今年度の訪問では、自己記録の習慣がない現地の妊婦に家庭での調査が可能であるかを確認するために胎動チェックと水分摂取量チェックを実施した。短期間滞在であったため、現地助産師に、健康診査のために来院していた妊娠末期の妊婦10人をリクルートしてもらった。自己記録の経験がほとんどなく、さらに水分摂取量など意識したこともない妊婦に調査内容を説明したが、英語が話せる妊婦でも助産師が現地語で説明をしないと理解を得ることができなかった。今後、胎動計を使っての調査をするに当たり、丁寧な英語の説明文を準備しているが、あまり有効でないことが明らかになった。また、3日間の調査であったが、正確に記録されていると思われるものは半分に満たなかった。今回の回収率の結果から、途上国における自宅での調査は、事前の説明や操作練習などをプログラムとして組み込んでいかないと十分なデータ数を確保することが困難であることも明らかになった。また、胎児の健康状態の良否の指標となる胎動に関しては、現地の妊娠期の保健指導項目として挙げられていないことから、知識が妊婦に浸透していない可能性が示唆された。保健指導内容に胎動カウントを導入してもらいうことも胎動モニターによる調査と共に、胎児の健康状態の悪化の早期発見につながると考える。調査施設がJICAの支援により増築され、医師が常勤する病院へと昇格した。医師とは訪問時に討議することができたため、今後、研究を進めるに当たり協力が得られると期待している。
|