本研究の目的は①『演劇』を教材としたシミュレーション授業を実施しその効果を評価すること、②生きた教材である『演劇』の看護教育へ活用し、新しい看護教育の教材開発につなげることである。 授業評価の分析視点:①学習者の特性別、②教材提示方法別、③教授方略別のうち当該年度は看護学生対象から適用範囲を広げ、臨床助産師対象の研修会、幼児教育課程の授業、一般対象の公開講座を実施し、学習者の特性別に教材評価を行った。 1)臨床助産師の研修会で、ストーリー性を持った現実生活が疑似体験できるDVD教材は、育児負担に追い詰められた初産婦の家族生活の実態を理解するのに有効であった。2)保育学生の授業評価には「こんな家族もあると気づいた。保育園に来る親の心が少しは理解できるかも」「細かい実写がなされていた。感じたことを保育者の実践につなげていきたい」など対象理解の視点を含む感想が多く挙げられた。3)孫育て世代の対象に実施した公開講座では「若い母親の大変さと支える大事さがわかった」「離れて暮らす子育て夫婦の生活も思いやる必要を感じた」など世代間ギャップを埋める対象理解の感想が挙がっていた。 いずれの対象においても、劇化された映像教材は視聴者の“気づき”を促し、学習者の特性に応じた対象理解に有効であった。映像教材視聴後はディスカッションやロールプレイへの参加が活性化され、学生の主体的な学習が促進されたと評価できた。映像教材開発の狙いは看護学生以外の対象においても達成されたと評価できた。 看護者以外の対象(保育学生、シニア世代対象の講座)においても授業評価は概ね肯定的であった一方、保育学生の69名中19名(27.5%)に「将来の仕事に役に立つとおもわない」という評価もみられた。対象者の特性に応じた授業の目的、教材の使い方などの授業デザインに課題を残した。
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