本研究の目的は、音声データから快感情を分析することにより認知症高齢者に快刺激となる日常生活場面のコミュニケーション技術を開発することであった。平成29年度は、模擬場面から音声データを収集し分析することに取り組んだ。 音声データから快感情を伴う場面の状況と言葉を明らかにすることを目的として、2者で行う精神科レクリエーションの模擬場面を設定し、健康な成人16名の参加者から8場面の音声データを得て分析した。参加者それぞれの音声が得られるように、個々にヘッドセットを装着してもらい音声データを収集した。その結果、場面の状況では、挨拶、共感し合う声の掛け合い、作業が完成した時の会話などの状況において、快感情があることが確認された。言葉については、褒める言葉、感謝の言葉などで快感情があった。実験後のアンケートからは、笑顔を向けられたときに快感情が伴ったなどの感想があった。このことから、音声データだけではとらえられない場面にある表情や行動が快感情に関係していることが示唆された。 また、今後の課題が明らかになった。個々に装着したヘッドセットのマイクは2人の音声を拾うとともに、2人が同時に話したときの音声の重複もあり、個々の音声データを分析することについて課題があった。さらに、今回の模擬場面は座って行う状況設定であったが、参加者の動きによる雑音が繰り返し入っていた。そのため、日常生活場面において特に動きのあるケア場面における音声データの収集は今後の課題であると考えられた。
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