本研究の目的は、高齢者介護施設における看護人材の確保と看護の質向上の方略のひとつとして、新卒看護師の採用の可能性を検討することである。 平成30年度は、本研究の最終年度として、これまでに行った介護老人福祉施設の施設長や看護職員等に対するヒアリング調査および質問紙調査の結果についての総括を行った。 調査結果から、介護老人福祉施設では、看護職員の募集をしても応募が皆無に近く、医療機関と比べたときの待遇面の差だけでなく、介護福祉の現場での看護活動について看護職者に理解が十分にされていないことなどが看護職員の確保の困難に影響している状況がみられた。そのため、施設側が看護職員に求める条件(質)を問う以前に、まずは人手を求めることが優先し、派遣など非常勤看護職員の採用によって人員基準を補う施設も見られた。また、施設によっては非常勤看護職員に求められる看護活動の制約により常勤看護職員の負担が増すことで、常勤看護職員の就業継続にも影響を及ぼしている状況がうかがえた。 また、施設の利用者である高齢者理解や疾患の理解の不足や医療的ケアが十分に実施できないことへの危惧や、施設で新卒看護師を教育する体制が整えられないことにより新卒看護師の将来のキャリアの妨げになることが新卒看護師の採用の障壁となっていた。一方、新卒看護師を採用することに対しては、福祉看護に理解ある看護職員を育成することにつながるという期待も有していた。看護活動の場は医療のみに限らず、介護福祉の現場も含まれるため、看護職者が活動する場に応じた看護について、看護職者自身が幅広く理解することが求められる。
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