研究課題/領域番号 |
15K15903
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
片山 知美 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 臨床研究企画運営部, 研究員 (30510812)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ホームホスピス / QOL |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ホームホスピスで生活する人々のQOLに影響を与えている要因を明らかにすることを目的に自記式もしくは他記式質問紙と半構造化面接を併用した個別訪問面接による調査を開始した。対象は、ホームホスピスの生活者およびそこで生活していた家族を看取った遺族(A群)、対照群とし、特養の入居者およびそこに入居していた家族を看取った遺族(B群)、自宅で生活を送りデイを利用している生活者およびデイを利用していた家族を看取った遺族(C群)の3群を対象とした。現時点でA群遺族1名、B群生活者1名、遺族2名、C群遺族1名に調査を終えている。 ホームホスピスで生活していた家族を看取った遺族への調査からは、施設入所時には、「危険予測から生活者の能力を制限する」という状況があったのに対し、ホームホスピスでは「危険を納得した上で得る生活者の自由」があることが語られた。また、面会時の様子では、ホームホスピスでは自分の部屋以外の場所にも居場所があり、「スタッフや住人とのつながり」があったこと、自然と助け合いが生まれていたと語られた。我々が行ったホームホスピスの実態調査の結果においても、ホームホスピスのスタッフが入居者との関わりで大切にしていることとして、【生活者に寄り添う】、【これまでの生活やこだわりを大切にする】、【希望をかなえる】ということが明らかになっており、生活者の能力を大切にしながら、本人の希望をかなえ、生活者に寄り添うことで自由を得ることができていると考えられた。また、ホームホスピスでは入居者家族との関わりにおいて、【家の開放】、【家族の力を活かす】ということを大切にしているという結果が得られていたが、遺族からも家の中に家族が居場所があると感じることができていることや、スタッフや住人すべてが疑似家族となり、お互いを支えあっている環境が存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時においては、ホームホスピスの生活者への他記式質問紙と半構造化面接を併用した調査を計画していた。しかし、ホームホスピスの生活者のQOLをより深く把握・検討する上では、特養や在宅生活者との相違点を明らかにする必要があると考えられた。よって、ホームホスピスの生活者およびそこで生活していた家族を看取った遺族(A群)以外に、対照群とし、特養の入居者およびそこに入居していた家族を看取った遺族(B群)、自宅で生活を送りデイを利用している生活者およびデイを利用していた家族を看取った遺族(C群)の合計3群を設け調査を行っており、データ収集に当初の計画以上に時間を要している。 また、ホームホスピスを含む特養、在宅の生活者への調査では、選択基準である「質問への回答が可能な者」、「約60分の面接に耐えられる者」に該当する者が少ないことや、除外基準である「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランクⅢ以上の者」が多いこと、さらに、対象者が高齢であるが故に調査実施時に体調がすぐれないなどの理由から、調査の延期が必要になるなど調査対象者の特性に伴う問題から、研究の進捗がやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ホームホスピスの生活者およびそこで生活していた家族を看取った遺族(A群)、特養の入居者およびそこに入居していた家族を看取った遺族(B群)、自宅で生活を送りデイを利用している生活者およびデイを利用していた家族を看取った遺族(C群)に該当する対象者に対し、自記式もしくは他記式質問紙と半構造化面接を併用した個別訪問面接による調査を実施し、ホームホスピスで生活する人々のQOLやQODに影響を与える要因と課題を検討していく。さらに、得られたデータを分析し、関連学会での発表も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査実施の遅れに伴い予定経費に沿った使用が行えなかった。また、遠方での調査については、交通費削減のため、可能な限り1回の出張において複数の調査を実施するようにしており、交通費ならびに宿泊費の削減がはかられた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は本研究の最終年度であり、調査実施にあたり、調査協力者の協力を得る。よって、調査のための交通費ならびに宿泊費、さらに、調査で得られた音声データの文章化費用、データ分析に関わるコンサルテーション費、学会参加費などを必要とする。
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