研究実績の概要 |
本研究は発達障害児の早期発見・早期療育のための支援方法を修得する教育プログラムの開発を目的としている。平成28年度は,岡山県内の発達障害児およびその家族に対する支援の実態調査結果を基に,発達障害児の早期療育に向けた保健師のスキルアップのための研修会を企画した。まず発達障害児の早期療育に関わる際に感じる困難を明らかにし,今後の研修の在り方について検討することを目的として研究を実施した。研究対象は,岡山県内全27市町村保健師の中で研修会参加を希望し,調査に同意の得られた者とし2016年12月から翌年1月に調査を実施した。調査内容は現在支援している子どもの属性,発達状況,家族構成,親の精神ストレス状況等とし,研修会にて使用した事例検討フォームにより収集した。なお本研究は,岡山大学大学院保健学研究科看護学分野倫理審査委員会の承認を得て実施した。その結果は,保健師の支援技術向上に必要な方策を3つ示した。1つは発達障害のアセスメント手法であった。自閉症を中心とした発達障害を識別するためには,専門のツールが必要である。M-CHATのようなツールをうまく活用し,家族を中心に保健師が子どもの発達に向き合い,気づく場として活用していく必要がある。次に子どもの成長における臨界期を逃さない支援方法である。養育者なりの養育を見守ることが子どもにとって不利益と見なされる時には,虐待として対応する必要がある。最後に養育者との関係構築技術である。妊娠を契機とした頻回な家庭訪問を制度化するなどして,保健師と母親が出産前関係を結びやすくする工夫が必要である。また望まない妊娠を避け,親になる準備を促すことも必要かもしれない。その場合は思春期教育として学校保健と連携する必要があるだろう。これらの結果を踏まえ,次年度以降市町村において有用な発達障害児支援方法を検討していく。
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