本研究は、持続可能な社会保障制度の確立の一助となるべく、自治体(医療・介護保険者)側に立って、患者・家族の意思決定を支援する、専門的なケースマネジメント(Advanced Case Management)を展開する「専門ケースマネジャー(Advanced Case Manager:以下、スーパーケアマネ(通称))を、政府の推進する地域包括ケアシステムの中核に位置づけ、患者・家族のQOLの向上とEnd of Life Careを支え、かつ、医療費・介護費の適正化を推進する高度ケースマネジメントモデル(Advanced Case Management Model:以下ACMM)を構築することである。 平成27年度に広島県呉市(フィールドを大崎上島町から呉市安芸灘地区(島嶼部)に変更)に、専門ケースマネジャー(慢性疾患看護専門看護師2名とその候補生2名が実施展開)を配置し、医療保険者側に立って、①国保・後期高齢・介護のレセプトの突合分析し(大崎上島町も実施)、医療・介護費の使われ方の内容を明らかにし、高額医療費使用者、入退院を繰り返す者、長期入院、多剤使用者、重複頻回受診者等を抽出した。加えて安芸灘地区に居住する高度退院調整が必要な住民26名(H27年度11名、H28年度15名)に対して、包括的なアセスメント、医療・介護等社会資源の提案と調整、医療介護関係者やケアマネジャーの調整、アドバンス・ケア・プラニングに関連した意思決定の支援を行った。 自治体(医療保険者)側のニーズはあり、専門的なトレーニングを受けたケースマネジャーが、レセプト等を分析し、対象者を抽出、介入することは、患者・家族のQOLの向上及び医療・介護費の削減に限定的ではあるが効果は観察された。今後、他の自治体にも展開できるようACMMを構築し、専門ケースマネジャーの養成プログラムについても提案した。
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