研究課題/領域番号 |
15K15917
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
金 壽子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60279776)
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研究分担者 |
洪 英在 三重大学, 医学部, 助教 (40538873)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知的障害 / 健康問題 / 家族 / 事例 |
研究実績の概要 |
症状から適正診断がされず重症化した事例「Issues and impacts on people with intellectual disability (ID) having health warning signs and difficulty expressing their symptoms in the community: case report」についてIASSIDDの2016 World Congress[豪州]で発表した。事例は、軽度の知的障害のある方で修学旅行前に異常に気づき近医を受診するも診断つかず、悪化して翌日再受診で病院搬送、虫垂炎悪化で緊急手術になり、術後、本人は状況把握ができず、修学旅行に行きたいストレスもある中、胃出血にてその後2回の胃の手術を受けた。オランダの介護施設職員と中国の内科医師より、同様の状況や事例があるとの情報を得た。米国の看護師からは、内因性疾患の診断は、一般人でも診断が困難であるとの意見があった。豪州の教育機関の教員は、理解の困難さが治療を受けた後にも大きな問題につながる事実に驚愕していた。 家族による健康危険サインのキャッチ方法「Detecting Health Warning Signs of People with an Intellectual Disability (ID) Having Difficulty in Expressing Symptoms in the community: An Interview Survey」について12th Nursing Congress[カナダ]で発表した。知的障害のある本人の異常を、家族は20年以上一緒に住むことによって培われた直観によって察知していた。一方、「疼痛の理解」や「家族の直観を言語化する」ことは困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究当初は症状の陽性尤度率でツールを検討する予定であったが、家族の健康危険キャッチが直観でありその言語化が難しいことを受けて、観察項目について豪州のComprehensive Health Assessment Program (CHAP)での汎用部分を検討した。CHAPではFirst Sectionが家族や支援スタッフによる全身状態に関する観察項目であったが、painに関する項目が多く、今回の研究結果から、長年連れ添った家族であっても疼痛に関する情報を得ることが困難であった。そのため、別枠での観察項目の評価ツール[現状の日常生活や作業所での作業の遂行能力/疼痛表現/排泄物に関する表現力]を現在検討している。知的障害者に関して治療難度の高い歯科診療に貢献してきた医師より、「内因性障害に関する健康危険察知については知的障害の方々に主に関わっている医療者であっても、察知し、評価することは難度が高い。加えて、個別性が高く、個を観察して現象を分析することが必要になるかもしれない」との助言を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、観察項目の評価ツール[現状の日常生活や作業所での作業の遂行能力/疼痛表現/排泄物に関する表現力]について具体的な事例を通してツール内容の検討を進めていく。現時点では関東内2カ所、関西県内1箇所で研究協力を得られる施設を検討している。加えて、日本では健康診断を実施しているという世界的にみても利点があること、最新の知的障害者の成人から高齢期に関する罹患率や有病率の文献を踏まえた、観察項目についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の報償費を平成28年度に支払ったため、人件費・謝金が増加している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度で人件費、報償費が調整できため、平成29年度の予算通りに使用予定。地域への成果報告会の実施は検討中で、開催した場合には人件費、報償費の割合増が見込まれる。
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