認知症によるひとり歩きにより、行方不明となる者が年間約1万6千人いるともいわれる。警察職員は認知症者や家族が安心安全に生活が送れるよう、日常の困りごとに対処されているが、対応しだいで認知症者の態度が硬化したり、パニックを起こしたりすることもある。高齢化が進展する今後に備え、警察職員による認知症者への適切な対処能力の向上は重要である。本研究の目的は、警察職員の認知症者や家族等への対応の実態、ならびに認知症に関する教育・研修の実施状況等を明らかにし、警察職員に特化した教育プログラム開発につながる示唆を得ることである。 研究方法は、まず、家族や介護・福祉職員を対象に認知症者の行方不明によって警察職員等とかかわった時の体験や思いについてのインタビュー調査を実施した。加えて、全国の警察署等を対象に、教育・研修等の実態を探るためのアンケートによる横断調査を実施した。 家族や介護・福祉職員は、警察職員に対し日頃の対応に感謝しつつも、認知症者特有の行動を理解して、さらに寄り添った対応を期待していた。また、警察職員等を対象にしたアンケート調査は回収率がごくわずかであったが、回答された内容からは、「施設内での講演・講義型の研修実施状況」に留まっており、「地域の行方不明高齢者等捜索模擬訓練」の参加等も今後取り入れたいと考えていること、「今後も教育・研修の充実を図る必要性を感じている」ことが明らかになった。 一般的な認知症の理解に加え、より実践的な内容の教育プログラムを開発する必要性が示唆された。
|