研究課題/領域番号 |
15K15938
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 由紀子 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (10546518)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分散システム / 自己最適化 / 安全収束 / 振動 / グラフ探索 / データ構造 |
研究実績の概要 |
相互に通信を行いながら協調動作する多数の計算主体から成るシステムを分散システムと呼ぶ.本研究では,環境変化や計算機故障が発生しても,分散システムがそれらに追従して自身の機能を最適に保つ,自己最適化能力を持つ分散システムの実現を目指す.特に,分散システムにおける最適化をシステム全体の性能に関する大域的な最適化,各計算主体における局所的な最適化の2つの観点からとらえ,自己最適化を保証する数学的な構造を解明する事を目指す. 本年度は以下の4点について結成果を得た:(i)自己最適化の理論的なバックグラウンドである安全収束性の連結支配集合問題への適用,(ii)個体群プロトコルモデルの振動問題の解析,(iii)エージェント群による分散グラフ探索の特徴づけ,(iv)オンライン予測問題を用いた自己最適化データ構造の解析.安全収束性とは,分散システムが最低限の機能要件を保証しつつ最適化を行う性質であり,(i)では局所的な協調動作のみでは安全収束性の実現が容易ではない連結支配集合問題に対して,安全収束性の実現可能性を示した.分散システムの自己最適化を環境に対して最適なシステム(=解)状況を出力とする計算ととらえれば,収束せず振動する分散計算システムの性質を把握することも重要である.(ii)では分散システムがある種の振動を起こすことが,リーダー選挙問題を解くことと等価であることを示した.分散環境での種々の問題はある種のオンライン最適化問題ととらえられる.(iii)では複数エージェントによるグラフの探索問題について,オフライン探索とオンライン探索で必要とするエージェント数にほぼ違いがないことを示した.(iv)ではオンライン自己最適化の一例として,クエリ列に対して二分探索木の構造を随時変更し,更新,探索コストを削減する二分探索木問題について,オフライン予測問題の解析手法をもとにコスト解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は自己最適化の一般的な理論背景となりうる安全収束性,分散計算の振動について結果を得るとともに,エージェントによるグラフ探索や自己最適化データ構造などについて,オンライン最適化とオフライン最適化の関係を解明しており,研究計画はおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究課題を継続するとともに,当初の計画通り,利己的な計算主体による局所的な最適化と分散システムとしての協調動作の関係の解明に取り組む.特に,ゲーム理論の観点を参考に,局所性,非同期性,並列性を考慮した利己的な計算主体の協調動作理論の確立を目指す
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度得られた結果の多くは国際会議での採択が期待されるが,本年度内には投稿・採択に至らなかったものの,既に国際会議等へ投稿準備が完了しているものもあり,来年度には採択,口頭発表が見込まれるため,海外渡航費用などを次年度に繰り越す.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度得られた結果が国際会議での採択がほぼ確実であると見込まれるため,主に国際会議参加のための海外渡航費用,参加費等に充当する.
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