研究課題/領域番号 |
15K15942
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷川 眞一 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (30623540)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行列補完問題 / マトロイド / 弦グラフ |
研究実績の概要 |
本研究課題の主要な研究対象である行列補完問題やユークリッド行列補完問題において,グラフの完全消去順序の概念が多項式時間可解性に重要な役割を果たしていることが知られている。本研究ではこの完全消去順序の概念の対称行列への一般化を提案し,完全消去順序を有する行列の特徴付けを与えた.この概念は単調な弦グラフの族に対する同時完全消去順序や重み付きグラフの距離保存消去順序などの概念を一般化しており,既存成果の統一的視点を与えることに成功した.一方で,特徴付けに基づく完全消去順序構成の高速アルゴリズムの設計は未完成であり,今後の重要な課題である. また前年に発表した群ラベル付きグラフ上での劣モジュラ関数を利用したマトロイド構成法の成果を利用して,対称性を有するユークリッド行列補完問題の解構造の解析を行った.対称性を有するユークリッド行列補完問題の解構造の解析は,近年盛んに行われている研究課題であり,様々な個別例題に対し解析結果が発表されている.本研究では,群ラベル付きグラフ上でのマトロイド理論を主軸とした,群の特殊性に依存しない汎用的解析方法の構築を行い,これまで未解決であった広いクラスの例題や異なる空間での問題を統一的に解析することが狙いである.本年度は,対象となるマトロイド基の逐次構成法の設計に成功した.現在は,この一般的成果を個別例題へ適用する最終段階であり,次年度の前期に研究成果を発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年に発表した群ラベル付きグラフ上でのマトロイドの成果を利用して,対称性を有するユークリッド行列補完問題の解構造の解析を行い,その成果を発表する予定であった.しかしながら当初の想定より一般的な理論の構築が可能であることがわかり,現在その応用をリスト化している段階である.理論構築に想定より時間を要したため,今年度の成果発表には至らなかったが,すでに十分な成果が得られていることから,研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
上記の対称性を有するユークリッド行列補完問題の解構造の解析の研究を引き続き行う.すでに対象となるマトロイド基の逐次構成法の設計には成功しているため、個々の応用例題に対し具体的に逐次構成法を利用した解析を行い,その成果を論文として発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
対称性を有するユークリッド行列補完問題の解構造の解析を行い,その成果を発表する予定であったが,当初の想定より時間を要することになり,今年度内の成果発表には至らなかった.引き続き研究を行い,得られた成果を次年度,イギリスとオーストリアで行われる剛性理論のワークショップにて発表する予定である.その旅費として助成金を利用する.
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