研究課題/領域番号 |
15K15950
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 賢一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (70617274)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | C-index / IDI / NRI / power-IDI / ROC解析 / AUC |
研究実績の概要 |
本研究の目標は,1. 複雑な生命事象に対するバイオマーカー評価法の確立と,2. 特異な部分集団を同定する方法論の構築である.本年は,前年度の研究において提案した修正IDIの数理的性質を吟味し,実際の医学における臨床研究データに適用した. 修正IDIは,IDI(integrated discrimination improvement)を基にした2つの二項回帰モデルの評価指標である.これは,二値応答の予測能力を改善する候補となる共変量(バイオマーカ―等)を含めたモデルの,これらを含めないモデルからの予測能の改善の程度を定量化したものである.修正IDIは,Bayesリスク一致性だけでなく,IDIにはないFisher一致性を有する点において,既存の指標より優れているといえる. 今年度の研究により,修正IDIはpower-crossエントロピーと関連する量であることが判明し,そのためpower-IDIと名付けた.また,IDIと同様の指標であるNRI(net reclassification index)もBayesリスク一致性をもたないことが示唆され,これに関する同様の修正が難しいと結論付けた.この結果は,先行研究(Hilde, Gerds, 2013)の主張を支持する根拠を与えた.さらに,power-IDIを実際の医学における臨床研究データに適用し,その有用性を示した. 上記の成果は論文としてまとめ,学術雑誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1について,既存の指標と関連づけて理論構築ができた.2については着手が遅れている部分はあるが,文献調査から新たな着想が定まりつつある.また,1において提案法を臨床医学のデータに対して適用し,その有用性を示すことができた点を考慮すると,総合的に順調な進捗にあると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2について,統計的機械学習に基づく方法の構築を目指す.既存の方法は,異質性のある集団を分離して個別に学習する方法が主であるが,集団間の情報を取り入れることで予測の精度を向上させられるため,これを検討する.また,今年度までで得られた方法も取り入れ,特異な部分集団を高精度で同定できるような理論の構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行のために必要な事項について研究費の執行をしたため,見込み額とは差が生じた.具体的には,出張旅程・回数の変更や洋書等の価格変動等である.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由により執行額は異なったが,研究計画に変更はない.これまでの研究成果に基づき,計画に沿って研究を推進する計画である.生じた差額は,計算機または書籍の購入に充てる予定である.
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