研究実績の概要 |
当該年度は、主な適用データと考えている臨床試験データの論文化が進み、出版された(Tanaka et al., Int J Clin Oncol. 2017;22(6):1052-1059.)。本試験では過去の臨床試験データを新規試験の既存治療群のヒストリカルデータとして用いることで、全体の対象者数を変えずに新治療群への割付比率を上げることが行われている。新規試験内では2:1割付が行われており、既存治療群に対し、新治療群の1/2に当たる情報量をヒストリカルデータから代用している。 その次の段階としてヒストリカルデータから用いる情報量を新規試験データとの類似度に応じて連続的に決定する方法についての研究を引き続き進めている。具体的に、動的利用を伴うベイズ流の手法のうち、階層モデルに着目し、ヒストリカルデータなどの事前情報に基づいて構成した興味のある統計量の事前分布について、事前平均を誤特定してしまった場合のバイアスの解析的な評価を行い、動的利用がなぜうまくいくかについて考察した。また、データに基づいてそのバイアスの補正やバイアスの最大値の制御を行う試みを行い、良好なシミュレーション結果を得ている。 当該年度中に当該研究に関連した統計理論の査読付き原著論文を筆頭著者で1報(Taguri and Kuchiba, 2018)、共著で1報(Takeda, Taguri and Morita, in press)発表した。これらはいずれも本研究で目標としている治療効果の推定方法に関する研究であり、有意義であると考えている。
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