研究実績の概要 |
当該年度は、ヒストリカルデータから用いる情報量を新規試験データとの類似度に応じて連続的に決定する方法についての研究を推進し、論文作成を行った。具体的に、動的利用を伴うベイズ流の手法は階層モデル、test then pool法、power prior、modified power prior、commensurate prior, commensurate power priorなど様々あるが、このうち特に正規近似を用いた場合に解析的に扱いやすい階層モデルに着目し、ヒストリカルデータなどの事前情報に基づいて構成した興味のある統計量の事前分布について、事前平均を誤特定してしまった場合のバイアスの解析的な評価を研究者自身の知る限り初めて行い、動的利用がなぜうまくいくかについて考察した結果を利用して、データに基づいてそのバイアスの補正やバイアスの最大値の制御を行う試みをさらに推進し、具体的なデータ解析手法を開発した。ベイズ流階層モデルに基づく推定量を修正することで、標準化バイアスの最大値(あるいはαエラーの最大値)を臨床試験のデザイン時に定めた値以下に抑える方法を提案し、シミュレーションにより既存の階層モデルに基づく推定量、新規試験だけを用いた結果、過去試験のデータを完全に用いた結果等と比較し良好な結果を得た。また、適用事例として実際の臨床試験データを用いたデータ解析を行った。これらの結果を考察とともに学術論文にまとめ、論文投稿中である(Taguri, M., Sakamaki, K. and Morita, S. (2019). Incorporating historical information for randomized clinical trials: dynamic borrowing with bias reduction. Unpublished manuscript)。
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