研究課題
本年度は、Clinical Trial Data Sharing (CTDS) システムを利用した、臨床試験の個人レベルデータ(individual participant data; IPD)に基づくメタアナリシスの方法論の研究開発を重点的に行った。特に、CTDSシステムでは、複数の異なる製薬企業が公開する臨床試験データを、異なるプラットフォーム上でしか解析することができないという制約があるため、単純な1段階式の解析方法による有効な統計解析手法を適用することができない。特に、このIPDに基づくメタアナリシスでは、従来の個別の臨床試験の解析において困難とされてきた、治療と効果修飾因子の交互作用の検出において、検出力を大幅に向上することができることが期待されていたため、その効率の損失の問題は、応用上、極めて重要な問題となる。本年度は、この異なるプラットフォーム上で、個別に解析した臨床試験の結果を、2段階方式で統合解析し、1段階法によって得られる大標本分散(Cramer-Raoの限界に対応)と同等の精度を有する推定量と最強力検定を与える方法についての研究を行った。特に、近年の臨床試験の実践で広く普及している、プライマリアウトカムが繰り返し測定される試験において、欠測が生じても、妥当な統計的評価が可能となる混合効果モデルをもとに、部分的にモデルのパラメトリックな制約を取り除き、セミパラメトリックな定式化のもとで、最良の精度・検出力を有する方法を開発した。これらの手法を、ファイザー、グラクソスミスクライン、塩野義製薬などと契約の上、IPDを提供していただいた新世代抗うつ薬の臨床試験のデータ解析に適用し、3000人規模の大規模な臨床試験統合解析から、多くの抗うつ薬の効果修飾因子の候補を有意に検出することに成功した。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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