研究実績の概要 |
新規治療法を評価する臨床試験において,得られている情報の不確実性に適切に対処し,治療効果の評価と意思決定を合理的に行うためのリスクの定量化・可視化に関する方法論の研究を行った.複数の目的をもつ臨床試験について,Asakura et al. (Stat Med 33, 2897-2913, 2014)の成果を異なる評価項目や意思決定手順等を伴う臨床試験へ拡張し,治療効果の評価と意思決定のための方法論の発展を進めた.またより現実的で幅広い場面に群逐次デザインを適用する際の意思決定の方式,過誤確率の制御,検出力,早期中止確率および試験終了までに必要な事象数や被験者数の評価における問題にとり組んだ.さらに予測信頼区間(Predicted intervals; PIs)を用いた治療効果の評価に基づくリスクの定量化と可視化に関する方法論について,複数の目的をもつ臨床試験への拡張を行い,試験の中止や継続により予測されるリスクを定量化・可視化する方法を提案した.PIsを多次元にて構築,提示する際に生じる問題への対処のみならず,coverage probabilityの評価,試験の早期中止やデザインの変更を可能とする他の頻度流およびベイズ流アプローチとの特徴,性能の比較,およびモニタリングの時期(早期・中期・後期)による情報の不確実性の程度と予測される治療効果や意思決定への影響についての評価を行い,PIsを構築する際に想定するシナリオ,モニタリング時期の選定,他の方法論と併せて意思決定を行う際の方式等,実地にて考慮すべき内容を整理した.これらの成果を纏め,実際の臨床試験においてより適切かつ合理的な意思決定を行うための指針を得た. 以上の成果について国際学会での発表を行い,学術論文として纏めた.これらの提案した方法論について解析プログラム(R)を整備し,実際の臨床試験に広く利用できるようにした.
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