研究課題/領域番号 |
15K15959
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
吉見 真聡 電気通信大学, その他の研究科, 助教 (00548000)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FPGA / 分散処理 / 密結合型専用ハードウェア / ビッグデータ解析 |
研究実績の概要 |
研究目的にしたがい,専用ハードウェアを搭載した複数の計算機ノードの協調動作により,オンライン分析処理を低電力に高速化する計算機システムの開発に取り組んだ.ストレージとネットワークを密に結合するFPGAボードによる,主記憶を介さないノード間の直接通信と,専用ハードウェアによるデータ転送経路上での演算を組み合わせて,ビッグデータ解析に要する大規模データセットの取り扱いを高速化しようとする試みである. 平成27年度は研究実施計画のとおり,結合演算を対象にFPGA上に構成する専用ハードウェアを実装し,4ノードでの分散結合演算の性能評価を行った.密結合型専用ハードウェアで効果的な分散結合演算アルゴリズムPPJoinを開発し,その実証実験を行った.ホスト PC からFPGAボードを制御するためのソフトウェアプログラムを開発し,ホスト PC と FPGA ボードが 協調して動作し,分散結合演算が可能であることを実証した.この計算機システムは,分散ソフトウェアフレームワークを使用した場合と比較して1.5倍から5倍程度,計算性能が向上することが確認された.専用ハードウェアによる分散結合演算の高速化の実証は国内外で類例の無い,新しい研究成果である. 集約演算,結合演算で良い性能が得られることが明らかになったため,OLAPで重要となるデータの削減,抽出,演算を行うハードウェアの設計を行った.また同時に,実際に利用されるベンチマーククエリを対象に,ハードウェアでOLAPの一部を行うクエリ・コンパイラの開発を行った. また,開発済みの集約演算用ハードウェアを結合演算に活用して,FPGA上で結合演算を行う専用ハードウェアの開発,評価に取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度計画である,専用ハードウェアの開発,クエリコンパイラの実装,ホストPCとFPGAボード協調の動作検証を達成し,実際のクエリへの対応状況の検討を開始している.また,本研究課題で開発した密結合型FPGAボードを活用して,生物学における相同性検索の高速化を行う専用ハードウェアを開発して評価を行っており,当初の研究計画を超える展開を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画にしたがい平成28年度は,開発した専用ハードウェアとクエリコンパイラ,制御プログラムを組み合わせ,ベンチマークTPC-Hのクエリを実行可能なDBMSを開発する.クエリごとの計算性能を個別評価するとともに,性能をさらに向上させるためにハードウェア,ソフトウェア両面からの チューニングを行う.開発した計算機システムはTPCーHのベンチマーククエリを使用して評価するが,研究の進展に応じてさらなる拡張を検討する.現在策定作業が続いているデータセンター向けベンチマークTPCーDSなど,より多いテーブルで複雑なOLAPを対象とした評価を行い,提案システムの有効性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
為替状況により計画よりも安価に物品を調達することができたため,当該年度の所要額を下回る請求となった.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された翌年度使用額は,FPGAボードの追加,計算機ノードの増強など,実験環境の充実のために使用する.
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