研究課題/領域番号 |
15K15965
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森畑 明昌 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10582257)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 並列リダクション / ラムダ計算 / 代数的性質 / 型システム |
研究実績の概要 |
2018年度は引き続き自動リダクション並列化をを研究するための理論的基盤としてのラムダ計算体系の定式化に取り組んだ。これは通常のラムダ計算に結合法則や分配法則など代数的性質を用いた式の単純化を加えたものであり、型システムによって並列計算時の計算コストに保証を与えている。 前年度に発覚した主要な問題点は以下の2点であった。1点目は、現実的なプログラムをこの体系で表現することの困難である。これについては、現実的なプログラムそのものをこの体系で表現するのではなく、現実的なプログラムの行う計算をこの体系で表現することによって回避した。2点目の問題は、この体系の性質の証明が複雑になることである。これについては、体系を全面的に見直し、意味論を既存言語への翻訳ではなく簡約として与え、性質の証明に既存の理論を最大限利用することで解決した。証明を簡略化したことで、この体系をどの程度拡張しても性質が壊れないかの議論が容易になった。その意味で、2点目の解決は1点目の問題に対しても良い影響を与えている。 これら問題の解決に加え、本年度ではさらに多くの例に対し本体系を適用することで有用性を確認した。その結果、既存のリダクション並列化で扱われたほとんど全てのケースを本体系での議論の俎上に載せることができることが確認できた。 以上の成果は論文としてまとめ、現在公表に向けて投稿中である。 また、これに加え、特に型システムによるサポート無しに並列化可能性が確認できる部分クラスを切り出すことで、マクロ木変換器を基礎とした並列計算言語を設計し、それに対する計算量の保証された並列評価アルゴリズムを与えた。この成果はJournal of Information Processingに採択が決まっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に発覚した問題点の解決にやや時間がかかったため。とはいえ、成果は出始めており、登校中の論文が無事採択されれば問題はないと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現状の成果の公表を目指すつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の進捗が予定よりも遅れ、一部出版に至らなかったたためである。 残額は来年度に研究成果の公表に用いる。
|