研究課題/領域番号 |
15K15968
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
石井 大輔 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00454025)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイブリッドシステム / 制約プログラミング / 区間制約 / 探索・論理・推論アルゴリズム |
研究実績の概要 |
非線形ハイブリッドシステムの高信頼な解析を可能にすることを目標に、下記の3項目を実施した。 (a) 信号時相制約の成否および頑強度の区間計算手法の開発:ハイブリッドシステムの区間シミュレーションを利用して、信号時相論理の成否および頑強度を高信頼に計算する方法を提案、実装した。提案手法では、原子命題の成否が切り替わったり頑強度が極値となる時点を区間ニュートン法により検出し、検出された時間区間を時相論理演算子に応じて伝播することにより信号時相制約を評価する。非線形ハイブリッドシステムの有限長の振る舞いに対して、信頼性高くかつ効率よい方法により、一般の時相論理式を評価することを可能にした。 (b) 信号時相制約の頑強度に基づくパラメタ化システムの統計的な最適化手法の開発:連続値をとる状態変数を持つプラントと制御器からなるシステムを考え、その制御特性を信号時相制約により記述、頑強度を最小化する制御パラメタを求める最適化問題を定式化した。MCMC法に基づき統計的最適化を実施、最適なパラメタ値を効率よく見つける手法を提案した。さまざまな特性を信号時相制約で記述し、柔軟にパラメタチューニングすることを可能にした。 (c) TSUBAME2スーパーコンピュータ上での区間制約ソルバーの大規模並列化:並列区間制約ソルバーをGLB (global load balancing) ライブラリを用いて再実装、パラメタチューニング、再実験を行った結果、900コアまで線形に近い速度向上 (最大751倍) が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,区間シミュレーションに基づく時相制約の充足判定および頑強度の計算手法を実現した。 パラメタ化システムの軌道集合に関する解析手法として、統計的最適化手法に取り組んだ。当初予定していた区間解析に基づきベクトル場を近似計算するアプローチには未着手である。 また、区間制約ソルバーの並列化を行い、数百コアを用いて提案手法による速度向上が得られることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
下記3項目に取り組み並列ハイブリッドシステム検証器の開発を進め、応用実験を行う。 (a) パラメタ化システムの解析手法:信号時相論理の頑強度計算に取り組み有望な結果を得たが、応用実験において記述や計算方法が煩雑になる問題が生じたため、新しい頑強度を導入することを検討する。あわせて専用の統計手法や区間解析に基づくパラメタ空間の探索手法を開発する。 (b) ハイブリッドシステム検証器の並列化:実数制約最適化ソルバーの並列化に取り組む。局所的な解を効率よくワーカ間で共有する方法を検討する。また、無作為シミュレーションの繰り返し処理をワーカに分散し、パラメタ空間の探索手法の並列化に取り組む。 (c) ハイブリッドシステムの実用的モデルの検証:SimulinkやModelicaによるモデリング例の検証に取り組む。感度特性や安定性などを信号時相論理の頑強度に落とし込む例を蓄積し、(a) の手法の有効性を確かめる実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務先を異動し、研究体制に変更が生じ、備品や消耗品の使用計画を変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者の研究室の所属学生がハイブリッドシステム検証器の構築作業に参加するので、開発用PCを追加で購入する予定である。また購入予定であった複数コアを搭載する並列計算用PCを次年度に購入し、並列制約ソルバー・検証器の開発・実験に役立てる。
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