研究課題/領域番号 |
15K15975
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
天嵜 聡介 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (00434978)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 工数見積もり精度向上 / プロジェクトの鮮度の価値 |
研究実績の概要 |
今年度は実験及び定量的分析のシステム化と,工数見積もりの根拠とするプロジェクトデータの鮮度と見積もり精度の関連性についての分析を行った. 実験及び定量的分析のシステム化においては,実験及び分析結果を出力するプログラムを作成することで実験実施の手順を自動化し,手順ミスなどが発生しにくいようにした.また,複数種類の工数見積もりモデルを用いた実験を行うことを前提としていたため,工数見積もりモデルと分析システムとの間でインターフェイスを統一し,異なる工数見積もりモデルを利用する際にプログラムの変更が極力少なくなるようにした.現在,同分析システム上で利用可能になった工数見積もりモデルは,線形回帰モデル,類推法,回帰木,ニューラルネットワーク,サポートベクターマシン,ベイズ法の6種類である.さらに,遺伝的アルゴリズムを用いた工数見積もりモデルについても実装を検討中である. 「鮮度」と見積もり精度の関係性については,工数見積もりモデルの中でも特に研究の進んでいる線形回帰モデルと類推法に着目して分析を行った.分析に当たっては,「鮮度」を「直近に経験したプロジェクトの数」で定める方法と,「直近の一定期間」で定める方法の2種類で検討した.その結果,適度なプロジェクトデータの鮮度というものが存在すること,また,工数見積もりモデルの種類によって適度な鮮度の度合いが異なっていることが示された.さらに,線形回帰モデルでは鮮度を考慮しない方が高い精度を示す状況でも,類推法を用いた場合は鮮度を考慮することで見積もり精度が向上する現象が見られた.回帰木を用いた実験でも,適切な鮮度の度合いが異なることが観察されている.これらの結果は国際会議(3件)で発表済みである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では分析システムの開発と「鮮度」の影響分析の実施を計画していた. 分析システムで実験の実施及び分析結果のグラフ化などはほぼ自動化できた.また,同システムでは計画で示した通り6種類の工数見積もりモデルが利用可能となっている.昨今,機械学習手法への着目が高まっており,その実装がフリーで利用できることが開発の効率化となった.計算時間の長さが課題として挙がっているが,概ね順調に分析システムが構築できた. 「鮮度」の分析では特に著名な2つの工数見積もりモデルを比較することで,「鮮度」の影響と工数見積もりモデルとの関連性を十分に観察することができた.特に,鮮度を考慮することが有効な場合とそうで無い場合があり,その違いも工数見積もりモデルの種類と関連している可能性があることは新しい発見であった.これらの成果は査読ありの国際会議で3件発表しており,概ね順調に研究を進めることができている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,分析システムで利用可能となった工数見積もりモデルを用いて「鮮度」と工数見積もり精度の関係について分析・検討を続けていく.この際,機械学習法が要する実験時間の長さ(現状で数日)を解決するため,分析プログラムの改良も継続していく.また,新たな工数見積もりモデルの追加も研究動向を見据えつつ検討していく. 「鮮度」の影響を考慮する方法として,今年度採用している「過去のプロジェクトは利用しない」という方法を一歩進めて,「過去のプロジェクトの影響度合いに違いをつける」という方法を本格的に検討していく.さらに,機械学習を用いた工数見積もりモデルが多いことから,パラメータ調整の観点から「鮮度」の影響を考慮する方法についても検討していく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初,分析システムを稼働させる計算機の購入を計画していたが,分析システムの構築過程において,機械学習手法の計算時間の長さが課題となっている.計算時間の長さを解決する方法として,計画額より高価な計算機の購入する方法及び分析システムの並列化による方法の2つを現在検討中である.採用する方法によって購入する計算機の金額及び台数などが異なってくるため,当該年度では購入を控えた.
|
次年度使用額の使用計画 |
実用的な計算時間で機械学習手法を用いた実験を行えるような構成を考えた上で計算機及び周辺機器の購入に充てる.
|