オンデマンド型電力供給 (Energy-on-Demand: EoD) は需要家サイドの電力マネジメントのための新しいコンセプトであり、電力の流れを高度に制御することを目的とする。利用可能な電力が限られている状況で、電力割当マネージャが最適な電力割当を計算し各家電への電力供給量を制御する。本研究では、家電の消費電力の組合せ最適化に基づくEoDシステムの提案、実装および評価を行った。まず初年度は、各家電の消費電力をスマートタップを用いて測定し、多重選択ナップザック問題のアルゴリズムで最適割当を決定し、赤外線通信等で家電を制御することで電力割当を行うシステムを実装した。2年目は、例えばバッテリーを持つ機器は不安定な太陽光発電からの電力供給を受けられる一方で、常に安定した電力を必要とする機器は安定した商用電源を割り当てる、といったように、複数種類の電力をそれぞれ適した電力消費機器に割り当てるシステムのプロトタイプを開発した。3年目は、割当制約付き複数ナップザック問題に基づく電力割当制御をいわゆるIoTデバイスで実現した。具体的には、Raspberry Piのような小型コンピュータ上で、一般的な整数計画問題ソルバであるSCIPを用いて最適割当を計算させた場合でも、一般的な家庭を想定した問題規模であれば、実用的と思われる所要時間で割当計算が終了することを明らかにした。また前年度のプロトタイプシステムを発展させて、Raspberry Piを割当制御マネージャとする電力割当制御システムを実現した。最終年度は、より洗練させたパラメータ定量化手法に基づくアルゴリズム、実装の効率化、本手法が適用できる範囲の拡大のためのシステムの拡張に関して検討した。年度内の論文等としての成果発表には至らなかったため、今後、成果発表のため研究を発展させる計画である。
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