研究課題/領域番号 |
15K15983
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
野林 大起 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40632906)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 無線LAN / チャネルボンディング / チャネル干渉 / IEEE 802.11ac |
研究実績の概要 |
平成 27 年度は、異なる無線通信規格が混在する環境下、特に無線 LAN におけるチャネルの利用方法が異なる無線通信間の影響をシミュレーション及び、実機実験を実施することで、その実態を明らかにした。 (1) 異なる無線通信規格が混在する環境下における各通信の相互影響のシミュレーション評価 チャネル利用状況を把握するための指標を算出するためには、異なる周波数帯域幅を利用する通信デバイスが混在する環境下において、チャネルが競合した場合の通信特性について詳細な分析が必要である。平成27年度は、チャネルボンディングにより広い周波数帯域幅を利用する IEEE 802.11ac 規格と、従来の IEEE 802.11a/n に着目し、これらの通信が互いに干渉する環境において通信性能にどのような影響を与えるか、シミュレーションにより評価を行った。並行して、最終到達目標であるチャネルの効果的な利用を目的とし、無線 LAN 環境における端末密集環境を考慮した衝突回避のための調整方式を提案し、その有効性をシミュレーションにより検証した。また、IEEE 802.15.4 においても周囲の通信状況に応じて利用するチャネルを確率的変化させる送信チャネル切替方式を考案した。 (2) 実機を用いた無線通信機器のチャネルへの影響調査 通信規格によっては、周辺の無線チャネルの利用状況によって利用する周波数帯域幅を動的に変更する方式が導入されている。そのため、チャネル空間の正確な利用状況を把握することは困難である。そこで、平成27年度は、IEEE802.11a/n/ac規格に着目し、チャネル帯域幅の利用方法が異なる複数の無線 LAN 規格が混在する環境において、各無線通信規格のデータ伝送が互いの通信にどのような影響を与えるかその相互作用を調査した。その結果、変調方式である256-QAM を利用する IEEE 802.11ac は、従来の64QAMを用いる11a/n と比べ他チャネルの通信による干渉が原因で性能が低下することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 27 年度に予定していた実験項目について、おおむね予定通りに研究が進捗している。異なる無線通信規格が混在する環境下における各通信の相互影響についてシミュレーション、及び実機による評価を行った。シミュレーション評価では、異なるチャネル帯域幅を利用する通信が混在する無線 LAN 環境において、物理層及び MAC 層の挙動が互いの通信にどのように影響を及ぼすか性能評価を行った。並行して、最終到達目標であるチャネルの効果的な利用を目的とし、無線 LAN 環境における端末密集環境を考慮した衝突回避のための調整方式を提案し、その有効性を検証した。また、IEEE 802.15.4 において周囲の通信状況に応じて利用するチャネルを確率的変化させる送信チャネル切替方式を考案した。一方では、利用するチャネル帯域幅が異なる通信が、様々なチャネル上で発生することで、その通信性能にどのような影響を与えるか実機による検証を行った。この結果より、異なるチャネル帯域幅を利用する通信が混在する場合におけるチャネルの利用方法に関する知見を得た。以上の通り、当初の研究計画に従い研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に関しては、当初の研究計画に従い研究を遂行する。 (1) 異なる通信規格の混在下におけるチャネル干渉を考慮したチャネル可用率の考案・評価 平成27年度の成果から、同一チャネル空間においてチャネルボンディングなどの物理層の技術が混在して動作している無線通信環境を考慮し、各チャネルの利用状況を把握するためのチャネル可用率算出方法を検討する。具体的には、各チャネルが他のチャネルから受ける影響、及びフレームの送信スケジュールに与える影響を推測することで各チャネルの可用状況を算出する。このチャネル可用率の有効性をシミュレーションにより評価する。 (2) チャネル可用率を用いた協調型無線ネットワーク構築方式の考案・評価 (1) において考案したチャネル可用率に基づき、各無線ノードが協調することで自律的に無線ネットワークを構築する方式を考案する。この方式では、無線ノードが周期的に利用可能な全チャネルのチャネル可用率を算出し、チャネルボンディングやアンテナ技術、そして物理的な機器の距離など、動的に特性が変化するチャネルの中で適切なものを選択しチャネルを切り替える。これにより、同一チャネル空間を利用する無線通信規格のネットワーク年が互いに無線資源に対して効率良く棲み分けることが可能となり、利用可能な全チャネルを均一に利用することを実現し、ネットワーク全体の通信性能を向上させることを実現する。そして、本方式をネットワークシミュレータ上に実装し、その有効性を評価する。
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