近年,将来ネットワーク技術の発展により,ネットワークの上位レイヤの形態が急速に変化してきている.本研究では,上位レイヤとしての将来ネットワーク技術と,下位レイヤとしての全光ネットワークの相互作用を考慮した統合的なネットワーク設計手法を確立することを目的とする.そこで,課題を「(a) コンテンツ指向全光ネットワーク設計」,「(b) 仮想全光ネットワーク設計」,「(c)統合ネットワーク設計」の三つの小課題に分け遂行してきた. 課題(a)においては,コンテンツ指向ネットワークにおけるコンテンツキャッシュ問題及びコンテンツ配置問題に取り組んだ.コンテンツキャッシュ問題では,これまでに提案した分散的情報共有によるコンテンツダウンロード手法の改良を行い,その有効性を評価した.また,コンテンツ配置問題では,コンテンツの人気度に応じたコンテンツ配置問題を数理計画問題として定式化し,それを解決する手法の提案を行い,その有効性を示した. 課題(b)においては,仮想ネットワークを実現する技術の一つであるSDNに着目し,研究を遂行した.本研究では,これまでに提案した,フローエントリ集約を用いた経路制御手法の改良を行い,その有効性を示し,その成果を英文論文誌で公表した.さらに,SDNをより有効に利用するために,TCPの輻輳制御に関する検討も行った. 課題(c)においては,課題(a),(b)の統合に向け,全光ネットワーク設計に着目し,研究を遂行した.具体的には,将来の光ネットワーク技術であるマルチコアファイバを用いたエラスティック光パスネットワークにおいて,コア間クロストークの削減と光パス設定の棄却率の改善を同時に行うネットワーク設計を行った.
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