研究課題
平成27年度の重要な研究課題は、三次元物体の特徴量の開発であった。特徴量の抽出処理は、パターン認識全般においても重要な課題である。これに対して、近年、畳み込みニューラルネットワークによる特徴抽出が注目を集めている。本研究でも、優れた弁別性を有する三次元物体の特徴量を抽出するため、この畳み込みニューラルネットワークを用いることを考えた。畳み込みニューラルネットワークにより弁別性の優れた特徴量を抽出するためには、大量のラベル付きデータでの学習が必要となる。しかし、一般に、三次元物体のデータセットは未だ小規模である。そこで、大規模画像データセットで学習した畳み込みニューラルネットワークを用いて、特徴抽出を行うことを考えた。学習済みの畳み込みニューラルネットワークの低層の畳み込み層は、画像のエッジやコーナーといった特徴を捉える。本研究では、三次元物体からレンダリングした深度バッファ画像を、学習済みの畳み込みニューラルネットワークに入力し、畳み込み層の出力の共分散を特徴量とすることを考えた。本手法は、従来手法と比較して、優れた弁別性を有することを実験で確認した。また、本手法は、深度バッファ画像だけでなく、通常の画像にも応用できる。食事画像の認識に応用し、従来手法よりも優れた認識性能を得ることを確認した。その他、三次元物体の自動アノテーションを評価するためのデータセットの作成、色付き三次元物体に対応した特徴量の抽出、マルチモーダルニューラルネットワークの調査・考案を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度に計画していた、三次元物体の自動アノテーションのためのデータセット作成と、新たな三次元物体の特徴量の考案を行うことができた。データセットの作成では、含まれる三次元物体・ラベルの内容が異なる二種類のデータセットを作成した。このデータセットを用いて、予備実験を進めた。特徴量の考案では、研究実績の概要で述べた様に、学習済み畳み込みニューラルネットワークを用いた特徴抽出手法を考案した。その他、画像のテクスチャ解析手法であるLocal Binary Patternを応用した、色付き三次元物体の特徴量も開発した。また、平成28年度に研究・開発を予定しているマルチモーダル次元削減手法については、予備実験・調査等を終えている。以上から、おおむね当初の計画どおり研究が進められていると判断した。
今後の研究では、三次元物体の自動アノテーションのためのマルチモーダル次元削減手法の考案・開発を進める。これまでの研究で、評価のための三次元物体に形状を表す複数ラベルを付与したデータセットの作成と、マルチモーダル次元削減手法の予備調査を終えている。三次元物体とそれに付与された複数ラベルとの関係は、二部グラフで表現できる。この二部グラフで表現された関係を反映した、部分空間の解析方法を考案することが、今後の重要な課題となる。また合わせて、得られた研究成果を、論文誌にまとめることも進める。
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