研究課題
複数右辺ベクトル,及び係数行列の対角部分にシフトパラメータをもつ連立一次方程式(以下,シフトブロック連立一次方程式)は,標準固有値問題の数値解法,及び素粒子物理学分野などで現れる.これらの分野においてシフトブロック連立一次方程式の求解は計算時間の大部分を占め,得られる数値解の精度は最終的に得られる結果に大きな影響を及ぼすことから,高速・高精度数値解法が必要とされている.シフトブロック連立一次方程式の数値解法として,シフトブロッククリロフ部分空間反復法がある.同法は,基準となる1本の連立一次方程式(以下,シード方程式)を解く過程で,各シフトパラメータに対する連立一次方程式(以下,シフト方程式)の近似解を少ない計算量で更新することができる.本研究課題では,Block BiCGGR法,及びBlock BiCGSTAB(l)法をシフトブロック連立一次方程式向けに拡張し,Shifted Block BiCGGR法,及びShifted Block BiCGSTAB(l)法を構築した.この拡張により,シード方程式とシフト方程式とより少ない反復回数・計算量で解くことが可能となったが,最終的に得られるシフト方程式の近似解精度が劣化する問題点が発見された.シフト方程式の近似解計算には縦長行列と小規模正方行列の積が多数現れるが,この行列積を可能な限り陰的に行うようにアルゴリズムを改良することで,シフト方程式の近似解精度の向上を図った.その結果,単純に拡張した手法と比較して,改良法は最良の場合で5~6桁程度高精度の近似解生成が可能となった.最終年度は,シフトブロッククリロフ部分空間反復法におけるシフト方程式の精度劣化原因の解析を行った.同法はシード方程式とシフト方程式の残差が同じ部分空間に属するように構築されているが,この条件が満たされなくなると近似解の精度劣化が発生することが明らかになった.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Proc. International Workshop on Eigenvalue Problems: Algorithms; Software and Applications, in Petascale Computing
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
日本応用数理学会論文誌
巻: 26 ページ: 318-352
10.11540/jsiamt.26.3_318