研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究活動は,主に,これまで研究してきた内容の成果発表と近年注目されている時間積分並列化手法について研究を進めた.成果発表については,代数的多重格子法における粗いレベルでの並列度集約手法について(iWAPT2018)や、対称疎行列ベクトル積をタスク並列化で高速化する手法(HPCAsia2019),RDMAによる隣接通信の高速化について(情報処理学会全国大会)などがある.さらに時間積分並列化については,マルチグリッド法をベースにしているMGRITに注目し,周期的な質点運動に対するMGRITの有効性分析(第162回HPC研究会)を行い,さらに線形の時間積分問題にMGRIT前処理付クリロフ部分空間法提案し発表した(SC 2018 Poster, SIAM PP 2018, Copper Mountain Conference on Multigrid methods 2019).今後,代数的マルチグリッド法とこの時間積分並列化手法を組み合わせることで,超大規模並列環境向け時空間並列のソルバが実現可能であり,単純な問題での評価をする段階に進めて行きたい. 研究期間全体を通じての主な成果としては,主に領域分割による隣接通信の情報からプロセス間の隣接グラフを作成し,それを元に粗いレベルでの並列度集約する手法を示し,実現した.高並列時には粗いレベルの通信が問題になるが,この並列度を集約手法により,ストロングスケーリング性能を大きく改善できるようになった.また,二アカーネルベクトルの情報を利用することで,複雑な問題にも収束性を向上させることができるが,本研究ではレベルごとに自由に二アカーネルベクトルの本数を増やせる独自の手法についても提案を行い,査読付国際会議等で発表を行っている.粗格子集約と複数のニアカーネルベクトルを設定できるライブラリは世界的にも少なく,概ね当初目標としてきたことは達成できた.
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