研究課題/領域番号 |
15K16000
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
深谷 猛 北海道大学, 情報基盤センター, 助教 (30633846)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 行列計算 / 通信回避 |
研究実績の概要 |
大規模な並列計算機上で計算を行う際に通信コストを削減することは昨今の重要な課題のひとつである.本研究課題では,通信コスト削減の観点で期待を集めている,通信回避型の行列分解アルゴリズムの実用性向上を目標とし,本年度は,以下に述べるような,いくつかのケーススタディを行った.
1)再直交化付きCholeskyQR分解に関する研究:通信回避型のQR分解アルゴリズムとしてCholeskyQR分解があり,近年,再直交化により数値安定性が大幅に改善されることが指摘された.本研究課題では,再直交化付きCholeskyQR分解アルゴリズムを用いたブロック版の直交変換の生成や,重み付き内積空間における直交化(QR分解)への応用を研究した.どちらの場合でも,現実的な条件の下では精度の良い結果が得られ,計算時間が従来法に比べて短くなることが確認できた. 2)TSQRアルゴリズムのカーネルの実装に関する研究:縦長行列のQR分解に対してTSQRアルゴリズムと呼ばれる通信回避型の計算手法が提案されている.本研究課題では,TSQRアルゴリズムの中の計算カーネルのひとつである,三角行列を上下に並べた行列のQR分解の実装方法を研究し,問題サイズと各種実装方法の効率の関係や,全体の計算時間への影響等を明らかにした. 3)Chebyshev基底を用いたCACG法に関する研究:Chebyshev基底を用いた通信回避型のCG法(CACG法)の性能評価と性能モデリングに関する研究を行った.CACG法のカーネルごとに演算性能を区別したモデルを導入することで,従来の(通信回避型ではない)CG法とCACG法について,並列数に応じた性能の優劣をモデルからある程度の精度で推測することが可能であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通信回避型の行列分解やそれに関連する行列計算アルゴリズムについて,新たな知見を得ることができており,初年度の内容としてはおおむね順調であると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
個別の事例に関する研究を継続するとともに,得られた結果を基にして,通信回避型の行列分解計算で共通して活用できる基盤技術の創出を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年2月24日に他経費(学会参加費)として58,286円、及び平成28年3月22日-23日に旅費として13,896円使用しているが、実際に支払いを行ったのは平成28年4月のため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年4月13日に13,896円、及び4月28日に58,286円を支出済み。
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