研究課題/領域番号 |
15K16001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 真吾 東北大学, 教育情報基盤センター, 助教 (80567214)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セキュリティ / 電子署名 / 安全性証明 |
研究実績の概要 |
電子署名方式の構成法の確立にあたり、必要となる安全性証明を構成できるか、という問題について、安全性証明を構成できない条件の究明を行った。研究の結果、フィアットシャミア型に属する幅広い電子署名について、安全性証明を構成できない一般的な条件が明らかになった。 また、上記の結果を拡張し、現在標準的とされている安全性に焦点を絞った結果についても研究を行った。その結果として、現在電子署名の安全性としてデファクトスタンダードとなっている、選択文書攻撃に対する存在的偽造不可性を、フィアットシャミア型の電子署名が達成できない条件が明らかになった。この条件は上記の1つ目の結果で示された条件よりもシンプルなものであり、安全性証明を持つ電子署名を設計する際の指針として効果的に機能すると考えられる。 また、フィアットシャミア型電子署名の安全性を向上させる一般的な手法を構築した。この手法ではデュアルモードコミットメントと呼ばれるコミットメントを部品として組み込むことで、従来のモデルでは達成できなかった安全性を達成できるようになる。またこの新しい部品を組み込むことによる処理のオーバヘッドは高々定数2倍程度であり、元来高速な処理性能が特徴であったフィアットシャミア型電子署名の性能を損ねることなく安全性を向上させることができる。 また、集約機能つき属性ベース電子署名のモデルを定義し、具体的な構成を行った。本構成では集約できる属性の形に制限があるものの、これまで知られていなかった、集約機能を持つ属性ベース電子署名としては初めての方式となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の目標であった集約機能を持つ属性ベース電子署名の開発を行った。まず、土台となる集約機能を持つ属性ベース電子署名モデルの定義、およびそのモデルを用いて必要となる安全性の定義を行った。また、考案したモデルを満たす具体的な方式を構成し、その安全性証明を行った。 上記の集約機能つき属性ベース電子署名の開発、およびその安全性証明を行う過程で発見された、電子署名の安全性証明を達成するための必要条件について詳細な究明を行った。また、その条件を回避し、より安全性の高い電子署名方式を構成するための一般的な手法についても考察を行い、その効果を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開発した集約機能つきの属性ベース電子署名は、その集約できる属性の形に制限が残るものとなっている。その制限を撤廃し、任意の属性つき署名を集約できる方式の開発を行う予定である。 また、現在開発済みの集約機能つき属性ベース電子署名は、その構成要素として多重線形写像という高度な暗号プロトコルを用いている。近年、この多重線形写像の実装において安全性上の脆弱性が発見されている。これが直ちに開発方式の脆弱性を意味する訳ではないが、多重線形写像を用いない方式の開発も合わせて行うこととする。 その後、属性鍵を発行できるセンタの複数の存在を許容する、複数鍵センタ属性ベース方式への対応を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度請求額とあわせ、次年度の研究遂行に使用する。
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