研究課題/領域番号 |
15K16008
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
近藤 あき 京都工芸繊維大学, グローバルエクセレンス, 助教 (30727053)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 判断バイアス / 感性評価 / 布 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、質感や価値を表現する際に用いられる擬態語が判断バイアスによりどのように影響を受けるかを明らかにすることを目的とし、その前段階として、前年度に検討した布に対する光沢や高級感の印象評価について、質感を表現する擬態語との関連を検討した。実験では、光沢の見えが異なる黒色のポリエステル織物を球体にかぶせた状態で視覚提示し、観察者は高級感、光沢感や、質感を表す擬態語について評価を行った。その結果、高級感と擬態語「ツヤツヤ」には正の相関が見られたが、「ツルツル」とは負の相関が見られ、光沢を表す擬態語には、表面特性だけでなく、高級感など質の違いの表現が含まれることが示された。これらの研究成果に関して国際会議(International Congress of Psychology 2016)にて研究発表を行った("The relationship between onomatopoeic words of luster sensations and high-grade feel of fabrics.")。さらに質感を量的に操作した布試料の作成を可能にするため、無縫製ニット横編機を用いた編物の作成とデザインシステムによる織物シミュレーションの技術を習得し、編物に対する質感評価の判断バイアスの研究について準備を行った。なお本年度は年度途中より産休・育休による研究中断が生じたため、平成30年度より研究を再開することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中での研究中断に伴い、予定していた編物に対する質感評価の判断バイアスの実験の実施について遅延が生じた。しかしながら実験で用いる試料についてはすでに作成済のため、中断期間終了後の平成30年度から直ちに研究再開できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
研究再開後の平成30年度は、布の質感に関して判断バイアスに加え、知覚表象におけるバイアスについても検討する。近年の研究では、直前の履歴へ同化するバイアスは判断レベルだけでなく知覚表象レベルにおいても生じることが示唆されており、刺激の見えは直前の試行の刺激に同化するように知覚されることが報告されている(Fischer & Whitney, 2014他)。そこで今後の研究では、布の質感についても知覚表象レベルで直前試行に同化するバイアスが生じるかを検討する予定である。刺激は本年度に作成したデザインシステムによる織物シミュレーション画像と、それをもとに実際に編み機で作成した試料を用いる予定であり、研究再開後に速やかに実験開始できる見込みである。布の質感を対象に、低次レベルの知覚と高次レベルの判断において生じる過去の履歴によるバイアスを総合的に調べることにより、人間の知覚や判断プロセスに関する基礎的知見を明らかにできると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中での研究中断が生じ、予定していた実験や成果発表を実施していないことにより次年度使用額が生じた。研究再開後の平成30年度において、実験実施に伴う人件費・謝金や、学会参加・発表のための出張費として使用する予定である。
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