研究実績の概要 |
前年度までの研究では、様々な視覚刺激に対する主観的な判断が、直前の判断に同化するように変容するという判断バイアスの生起範囲について検討した。平成30年度はさらに、視覚刺激の知覚(見え)も直前の履歴によって変容するかという、知覚表象におけるバイアスの生起について検討した。近年の研究において、方位刺激や顔刺激など様々な視覚刺激の見えが直前試行で呈示された刺激に同化するように知覚されることが報告されており(系列依存性; Fischer & Whitney, 2014, Liberman et al, 2014他)、直前の履歴へ同化するバイアスは判断レベルだけでなく知覚表象レベルにおいても生じることが示唆されている。本年度はこれらの知見をもとに、自身が以前の研究で明らかにした顔の魅力判断時に生じる同化バイアスが、顔の知覚表象レベルにおいても生じるかを検討した。実験では、顔魅力の計算モデルにより同一人物の顔から魅力の異なる複数の顔画像を生成し(中村・渡邊, 2017)、顔画像を短時間呈示した後、その顔を再生する試行を連続的に行った。その結果、現在の試行で再生した顔が直前試行で呈示した魅力度の異なる顔に同化することが示された。このことから、顔の魅力は判断レベルだけでなく知覚表象レベルにおいても直前試行へ同化することが新たに明らかになった。これらの研究結果に関して2018年度日本基礎心理学会にて研究発表を行った。
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